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弁護士に相談するタイミング~弁護士費用特約②~

交通事故に遭った被害者の方が、事故手続きで困った際に、いつ弁護士に相談するのがよいのかについてよく相談者から質問を受けます。
その答えは、「事故にあったらなるべく早く弁護士に相談する」が私の回答になります。事故から早期に専門家に相談を行う必要性について以下説明します。
1 事故手続きに対する情報格差の存在
事故手続きは、相手方の任意保険会社の保険担当者が行っていくことが通常です。しかし、保険担当者は、仕事で日々何十~何百件もの保険手続きを行っている一方で、事故に遭われた被害者さんの多くの方が人生初めての事故となります。
事故被害者さんが、事故で被った被害を何とか回復させようと、相手保険担当者と交渉しますが、多くの場合、上手くいきませんし、そもそも、上手くいっているのか、それとも上手くいっていないのか、どちらなのかもわかりません。
これは、例えると、初めて将棋やチェスなど理屈が必要なゲームにおいて、初めのプレーヤーと、プロのプレーヤーが対決するほど無謀な戦いと言えます。
よく、「相手の担当者の方凄く親切で、事故を起こした相手は許せませんが、保険担当者はいい人です」ということを聞きますが、保険担当者は、保険会社に雇われた社員ですので、基本的に支払義務を負う側の考えに従って動きますので、被害者側の考えに立ってくれていません。どうしても、保険会社の支払が少なくなるように手続きを進められてしまうし、それに気づくことが中々できません。
この立場や、事故手続きの情報格差を埋めるために、早期に交通事故弁護の専門家に相談すべきなのです。
2 事故手続きで困るのは事故発生直後から
慣れない事故に遭った方が困るのは、事故にあったその瞬間からです。
事故に遭うとその瞬間から、「入庫先?全損?代車期間?買替?車両保険?物損と人損?整形外科と接骨院?保険の打切り?後遺障害?」と次々に慣れない問題が生じます。
これらは、相手の保険会社担当者が、こちらに親切に教えてくれるとは限りません。教えてくれても、それは相手保険会社の利益を反映したアドバイスに過ぎないことが多いです。
自分の保険会社担当者も助けてくれるときはありますが、自分の保険会社の担当者の仕事は、被害者になった契約者の援助ではないため、やはり対応に限界があります。また、追突された事故のような過失が0の事案では、保険を使わないからお手伝い出来ないと言われてしまいます(某保険会社のCMでも、「もらい事故は自分で交渉?」と熱血俳優がやっていました)。
そんなときこそ弁護士費用特約です!
相手が保険会社の利益を守るプロを担当者としてつけるのであれば、こちらも自分の利益を守るために事故弁護のプロを代理人に立てるべきですね!
なお、交通事故のプロではない弁護士や、情熱の無い弁護士に相談すると「事故手続きが進んで、怪我の治療が終わったら(また)相談して」といわれることがあります。これは、事故の物損手続は複雑であることや、事故にあった被害者の方の不安を細やかにフォローするのが手間と考えていることに加えて、弁護士の報酬が「賠償金をいくら上昇させたか」で評価されるので、こういった物損手続や治療期間中の仕事が自分の報酬に影響が少ないため、早期に事故弁護を開始しないのが理由だと思われます。
しかし、事故被害者が一番困るのは事故最初ですし、医療問題にかかわる弁護士としては、治療期間をサポートせずにどうやって適切な後遺障害を獲得していけるのか不明です。
このような弁護士は選ばないほうがよいと思います。
3 まだ揉めていないから弁護士を入れなくても
自分の保険会社の担当者は、弁護士費用特約を使おうとすると、「まだ相手と揉めていませんし、特約を使う必要がないのでは?」と利用を思いとどまるように言われてしまうこともよくあります。
これは、弁護士費用特約は使っても基本的に保険料が上がらないのにもかかわらず、特約を使われれば弁護士費用を自分の保険会社が払わなければならないため、嫌なのです。事故に慣れた弁護士が介入することの被害者さんのデメリットはありません。それにもかかわらず、弁護士費用特約の利用を思いとどまらせるようなアナウンスをする担当者もまた親切ではありません。
そもそも、「揉めてから」弁護士を入れるということは、事故手続き上何か、見解の相違が生まれてしまったり、何らかの手続き上自分の要望が実現できない方向へ進んでしまった状態になってしまっていることを指します。弁護士をいれてリカバリーが可能な問題もありますが、過ぎ去ってしまった過去は変えられないため手遅れになってしまっている問題もあります。
「揉めてから」ではなく、「避けられる揉め事を避けるために」に弁護士を早期に介入させる必要があるのです。 弁護士である私が「早期に弁護士費用特約を使って!
というのは少し胡散臭い側面がありますが、私は事故を主力分野とする弁護士ですが、弁護士費用特約は3つほど保険に付保していますし、私自身が事故に遭った際には、自分とは別の弁護士に早期に事故手続きを依頼しました。自分のまきこまれた事故にずっと向き合っているのはストレスですので、保険料もあがりませんし、早く友人の弁護士に依頼をしてよかったと思っています。

後遺障害獲得事例②

当事務所は、医療過誤訴訟、交通事故医療訴訟を得意としていることから、事故に遭われた被害者の方で、適正な後遺障害等級が認定されるよう尽力しております。
今回は、当事務所の後遺障害申請サポートにより、後遺障害獲得に至ったクライアントの事例をご紹介いたします。なお、個人の特定を避けるため、事案は多少デフォルメしております。
当事務所の依頼者様で、二輪車での事故に遭い、足関節の骨折、下腿皮膚剥脱創、鎖骨遠位端骨折などの傷害を負った方がいました。二輪車で事故に遭いますと生じる傷害が非常に重たいものになる傾向がありますし、動いている状態で事故に遭うことが多いことから二輪車の方にも過失が生じる場合が多いと思います。二輪車に乗られる方に、人身傷害保険が大切な役割を果たすことについては過去のブログ記事をご覧ください。
さて、この依頼者様ですが、療養に努めたことから、骨折は癒合し、下腿皮膚剥脱創(テグロービング)についても皮膚移植がなされ、ある程度快方に向かいました。
しかし、症状固定時の症状としては、肩関節の可動域制限、足関節の可動域制限が残存してしまっており、ともに健側の4分の3以下の可動域に制限されていることから後遺障害が認定されれば後遺障害等級12級が認定される可能性がありました。
これらについて後遺障害申請をしたところ、残念ながら、関節の可動域制限については、ともに非該当、下腿皮膚剥脱創部分の皮膚移植痕が、醜状痕として後遺障害等級12級が認定されました。
当事務所としては、この自賠責の判断が、医学的にも賠償交渉的にも非常に問題があると考えました。医学的には、本件事故により肩関節及び足関節の可動域制限が生じていることから、その原因となる医学的知見を正確に指摘する必要がありました。また、賠償交渉的には、醜状痕の12級と可動域制限の12級では、今後認められる賠償金には雲泥の差が出てしまうことから、保障される金額の点からも、可動域制限による後遺障害の認定を諦めるわけにはいきませんでした。
そこで、当事務所の顧問医師とも協議を行い、肩関節及び足関節の可動域制限を生じることになった医学的な知見について協議を行いました。肩関節及び足関節の可動域制限を生じることになったレントゲン上の所見を細かく指摘し、また治療経過上、下腿皮膚剥脱創の皮膚移植に伴う足関節の拘縮の機序を細かく指摘したところ、自賠責への異議申立てにおいて、肩関節及び足関節の可動域制限が、他覚的所見に基づくものとして後遺障害等級12級をそれぞれ獲得することが出来ました。
そのため、賠償交渉的にも、後遺障害等級が併合され後遺障害等級11級となったことから、醜状痕の12級のみでの賠償交渉よりおよそ1500万円以上の賠償金の上昇効果を確認できました。
認められた個別の等級の上限は12級でしたが、醜状痕の12級にとどまっていた場合と、その他の関節可動域制限による12級の認定が加わったことで大変大きな補償の違いを依頼者様にお見せ出来た事例ですので紹介させていただきました。

慰謝料算定基準~入通院慰謝料③~

交通事故における傷害慰謝料の算定基準には複数ありますので、一般的に用いられている、自賠責基準、任意保険会社基準、裁判所(弁護士)基準のそれぞれの算定の説明や、注意点についてお話させていただきます。
最近は、ご相談者の方も、インターネット等で色んな情報にアクセスできますので「自賠責基準よりも、弁護士さんが使う基準の方が高いんでしょ?」と先にお話いただくこともあります。
確かに一般的には、「自賠責基準<任意保険会社基準<裁判所基準」なのですが、あくまで基準そのものはそうなのですが、実際の賠償金額の計算では必ずしも上記図式が妥当しないこともあります。まずは、自賠責基準の説明となります。
自賠責の基準は、近年改正され、2020年4月1日以降に発生した交通事故については、慰謝料の算定単価は1日4300円となっています。その上で実際の慰謝料の算定は、4300円×2×実通院日数(但し、≦通院期間)で算定されます。
この計算式には2つの上限があります。
1つ目の上限は、通院日数に関する上限です。実通院日数の2倍の日数分4300円の慰謝料が算定されますが、通院期間を越えることができません。
例えば、100日間で合計60回通院した場合、4300円×(2×60日=120日)ではなく、4300円×{(2×60日≦100日)=100日}=43万円となります。そのため、通院回数が多ければ多いほど慰謝料が増えるわけではないんですよね。反対に、通院回数が多すぎると、保険会社による早期保険打切りを招いてしまい、この通院期間の上限による制限を受けてしまいます。
2つ目の上限は、自賠責の補償限度額による上限です。よくある間違いに、「慰謝料って120万円まで補償されるんじゃないの?」というものがあります。自賠責の傷害の補償枠が120万円というのは合っているのですが、この120万円は「治療費、慰謝料、文書料、休業損害などその他損害すべて」が対象となりますので、当然通院回数や治療内容が多ければ、「治療費」が多くなりますので慰謝料の枠も少なくなります。
例えば、首、両肩、腰、両足首の治療をしますと全部で5部位の治療となります。首だけの治療と比較すれば単純に治療費は5倍となります。このような場合には、治療費が半年で50万円かかることも珍しくありません。また、仕事を1カ月程休んで30万円の休業損害が払われた場合には、これも120万円の枠を消費します。このケースでは120万-(50万+30万)=40万しか自賠責の枠が空いておらず、仮に90日実際に通院しても180日分の慰謝料が補償されるわけではないのです。
次に任意保険会社基準ですが、これは基準などといわれていますが、要するに「自賠責基準では納得しない方に、裁判所(弁護士)基準ほど高くはできないので、とりあえず自賠責基準以上の金額を提案する」だけですので基準として独立に扱うのが妥当か疑問です。
最後に、裁判所基準ですが、これは一般に、赤い本「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」に記載されている基準のことを指しています。通院期間を基準に傷害慰謝料の基本的な基準を公表していますが、この基準はあくまで目安であり、傷害の部位・程度などによって増減します。
これらの基準では赤い本の基準を採用すれば賠償金(慰謝料)が上がるのが一般的ですが、必ず上がるというものではありません。その代表的な例は、過失がある場合です。自賠責基準は、基準自体は確かに赤い本の基準より低いです。しかし、自賠責の基準は被害者に過失があっても、過失を考慮せず賠償項目が計算されます。そのため過失が概ね2割を超えると、「示談交渉」では、赤い本より自賠責基準の方が最終的な受取賠償金額が大きい場合が多くなります。その原因は、裁判所基準を用いて相手保険会社と交渉すると、過失の主張を受けますが自賠責基準(補償限度額内だと)ですと過失を主張されないためです。裁判所(弁護士)基準で交渉した場合に主張される過失は、慰謝料だけではなく、治療費、休業損害にも適用されて相手負担額が減りますが、治療費や休業損害は、過失減少分も含めて満額が最初に医療機関や被害者に払われます。そのため、払い過ぎた治療費や休業損害などについては、最終的に被害者が貰える慰謝料から差し引かれるという処理をされてしまいます。
 【例 通院期間:100日 実通院日数50日 過失2割】
自賠責基準:治療費50万、慰謝料43万円→受取慰謝料43万円
弁護士基準:治療費50万円、慰謝料57万6666円→受取慰謝料36万1333円
  {計算}
①過失減少分(治療費+慰謝料=107万6666円)×過失2割=21万5333円
②過失考慮後損害(107万6666円-21万5333円=86万1333円)
③受取慰謝料額{②-既払治療費}(86万1333円-50万円=36万1333円)

このように、必ずしも裁判所基準が有利というわけではありません。きちんとした保障を受けるには、事故からなるべく早く、事故賠償に詳しい弁護士に相談するのが望ましいです。気が付いたら、弁護士を委任する意味がほとんどなかったということを防ぐようになるべく早いご相談をお勧めいたします。

後遺障害獲得事例①

当事務所は、医療過誤訴訟、交通事故医療訴訟を得意としていることから、事故に遭われた被害者の方で、適正な後遺障害等級が認定されるよう尽力しております。
今回は、当事務所の後遺障害申請サポートにより、後遺障害獲得に至ったクライアントの事例をご紹介いたします。なお、個人の特定を避けるため、事案は多少デフォルメしております。
当事務所の依頼者様で、事故にあい、上腕又は大腿骨の骨幹部の開放骨折を負った方がいました。治療の結果骨癒合を得られたということで、ご相談の時点で認定としては骨折部に神経症状を残すものとして14級の後遺障害でした。
しかし、医療記録から感じる依頼者様の受傷の程度、症状固定時の依頼者様の症状からすると、骨癒合が良好に得られたとして軽微な神経症状が残存しただけとの認定には大変な違和感がありました。
そのため、当事務所の顧問医師とも相談し、医療記録を精査することといたしました。一番の違和感は、本人の残存症状の強さと、骨折部の範囲の広さから考えられる癒合状態の評価でした。
顧問医師とも協力し、現在の骨癒合状況を立体的に評価するほうが望ましいと考え、骨折部について追加で3DCTの撮影を施行していただきました。
その結果、レントゲンの撮影面からは骨癒合があると判断できたものの、3DCTによる骨幹部内部の癒合状態を評価したところ、骨癒合と評価するには不十分な骨欠損部分があることが判明し、骨欠損部分の存在により骨幹部の直径の減少率が50%以上となることがわかりました。
そして、依頼者様の骨折部には偽関節が生じていることが指摘でき、偽関節による等級として後遺障害等級8級、さらに骨折に伴う筋肉の骨折部への癒着による疼痛や可動域制限の存在を指摘することで、骨折部の遠位にある関節部の疼痛についても後遺障害等級12級を認定していただくことができました。
そのため、当事務所にご依頼いただく前は後遺障害等級14級のため、後遺障害が認定されたことで、自賠責保険の基準に引き直すと、後遺障害等級14級の場合は75万円の支払ですが、後遺障害等級8級への上昇がありましたので819万円が支払われることになり、保障が非常に上昇致しました。
相手方への請求分を含めれば、最終的な賠償額の上昇効果は1000万円を超えることから、依頼者様にとって非常によい結果を残すことができた事例としてご紹介させていただきます。

付保が望ましい特約~自動車保険の内容①~

交通事故に遭うと思いもよらない支出を強いられます。そのリスクに備えるのが自動車保険であり、各種特約になります。そこで、交通事故に関わる弁護士目線から付保されているといいなと思う保険・特約をお話させていただきます。
1 弁護士費用特約
業界の回し者といわれてしまうかもしれませんが、弁護士費用特約は保険料の割に補償が厚い特約となります。毎年のように特約保険料が上がっているのは、有用性を表していると思います。大事なのは、弁護士に対する費用が補償されることではなく、弁護士が弁護を行う上で必要になる調査費用又は実費が補償されることです。
ドライブレコーダーの復旧(数十万円)、協力医の医学鑑定書(数十万円)、裁判所を利用する際の印紙代(数万~数十万)といった付随費用が補償されるのは非常に弁護の幅を広げます。
正直弁護士の費用が一番安いのではないかと思う時もあるくらい、弁護付随費用の方が高くつくときがありますので、特約加入を強くお勧めします。
2 レンタカー特約、対物超過特約、車両保険、全損時諸費用特約、人身傷害保険
表題の特約は、全部つけておきたい特約です。4つ目までは、車両損害に関する特約のため、事故に遭えばほぼ利用が検討される保険で有用性も高いと思います。
レンタカー特約は、故障15日、事故30日を上限に、1日の設定レンタカー費用が補償されるという内容が多いと思います。相手の保険会社が認めるレンタカー期間が短いことから(買替2週間、修理3週間などといわれます)、過失や買替で少し悩んでしまい、事故から時間が経過すると、レンタカーの引き上げを迫られてしまいます。また、買替車両の納車に時間がかかるようになりましたので、レンタカー特約がないと納車までの間利用できる車が無い場合が出てきてしまいます。
対物超過特約は、自分ではなく、相手の車が全損(事故時の時価と修理額を比べて修理額の方が大きく、法律上賠償義務が時価額まで限定される場合指します。)の場合に、全損時価を超える修理費を相手に支払うことで争いを早期に解決する機能を果たします。事故の争いから早期に解放されるという意味で意外とつけていてよかったと感じる特約です。
車両保険は、特約とは少し違いますが、自身の車両損害について設定した車両保険の金額まで修理費や時価を保障して貰える保険になります。車両保険は、自分にも過失がある程度生じてしまう事故であったり、大きな事故に遭い時価を超える修理費がかかる場合などに、真価を発揮する保険です。車両新価特約も、修理費用が車両新価価格の50%を超えると設定された車両新車価格の支払を受けられるものです。ともに、仕事や生活である程度走行される方にはあったほうが良い保険・特約だと思います。
全損時諸費用特約は、事故で車両が全損となってしまった場合に、廃車費用や買替の諸費用について車両保険金額の10%又は設定上限額10万円が多いです)のどちらか低い方が補償される特約です。この全損時諸費用特約のいいところは、この補償を受けても、事故の相手保険に対して、「さらに」買替諸費用を請求できるという点です。この点は、自分の保険担当者も教えてくれませんし、交通事故に詳しくない弁護士さんは請求できることを知らない場合もあります。
最後に、二輪車(自転車を含む)を乗られている方の人身傷害保険が挙げられます。二輪車で事故に遭う場合、ほとんどのケースで双方に過失が出ます。追突事故のような形は少ないと思います。そして二輪車で事故に遭うと怪我が重くなりますが、過失がある場合、人身傷害保険がないと過失により補償が激減してしまう可能性があります。二輪車に人身傷害保険を付けると保険料がかなり高くなりますが、事故に遭った時の補償を考えると他の補償を抑えてでも人身傷害保険に入っておきたいところです。
以上、独断によるお勧め保険・特約になります。

慰謝料増額理由~入通院慰謝料②~

交通事故の主な損害項目に、入通院慰謝料があります。
この入通院慰謝料は、自賠責基準、任意保険会社基準、裁判所(弁護士)基準といった種類があることは昨今のインターネットの普及により広く知られているところです。
今回は、この入通院慰謝料が通常より増額される理由をお話します。
一般に慰謝料は、広く、当事者双方の社会的地位、職業、試算、加害の動機および態様、被害者の年齢、学歴等など様々な事情が斟酌されるとします。もっとも、毎年大量に生じる交通事故を解決するためには、実務的にはある程度類型的に被る精神的損害については、上記裁判所基準において考慮されているため、その考慮されている事情については基本的には増額理由になりません。
逆を言えば、事情としては考慮されているけれども、通常の程度を大きく超える苦痛が生じた場合や、そもそも非類型的事情で算定基準上考慮されていない事情については、慰謝料の増額理由になる可能性があります。
良く言及される慰謝料増額事由としては、①事故態様の悪質性(飲酒運転・赤信号無視等)、②事故後の行動が極めて悪質(轢き逃げ、罪証隠滅、被害者に対する不当な責任転嫁)、③胎児の死産などがあります。また、他にも、生じた後遺障害の程度が極めて重たい、治療経過が苛烈で通常の入通院の苦痛よりも大きい、スポーツ生命の断絶などが挙げられます。
ご依頼者から相談される理由としてよくあるものは、「相手は現場から逃げたんですが慰謝料って増額されないんですか?」「事故で仕事も休んだり、警察に呼ばれたり凄い迷惑なんですけど、慰謝料って増額されないんですか?」「相手は事故のことで嘘ばかりついているのですがこういうのは慰謝料増額されないのですか?」といった理由ですが、多くの場合これらの理由は慰謝料の増額にはならず、基本となる慰謝料算定基準の中に含まれてしまっているといえます。
こんなことを書きますと、「先生、轢き逃げは慰謝料増額理由って書いてありますよ」と怒られそうですが、轢き逃げが問題となった事案は、飲酒運転などで重大事故を起こして救護義務を果たさず、その後の刑事事件などでも犯行を否認したりなど轢き逃げそのものだけを理由とした増額というものは多くは見かけません。事故を起こした当初、驚愕により現場から立ち去ってしまい、しばらくして現場に立ち戻って事故手続きに服する場合や、後日みずからの事故を申告して自身の非を認めたような場合には、慰謝料増額に必ずしも当たるとはいえないかと思います。
慰謝料の増額理由は、個別性が高く、インターネット等の情報のみでは正しい判断はできないことから、もし苦しい状況に陥ってしまっている事故被害者様がおられましたら専門家への相談をお勧めいたします。

休業損害②

今回は、以前書かせていただきました自営業者の損害の続編として、休業期間・休業割合について書いていこうと思います。
そもそも休業損害とは、「受傷やその治療のために休業し、現実に喪失したと認められる得べかりし収入額とする」(青本)とされ、「傷害の治癒(あるいは後遺障害の症状固定)までに発生する就労不能ないしは通常の就労ができないことによる収入減少額を損害として把握するもの」(同)とされています。
つまり、①現実に休業ないしは十分な就労が出来なかった事実とともに、②実際に収入減が生じていることが必要とされます。
それぞれ①や②に関係する問題について以下深堀していきます。
給与所得者の休業損害の場合には、会社に休業損害証明書を作成していただければ概ね良いのですが、自営業者の場合には、まず休業によって就労が出来なかったわけではないが通院などで本来の仕事以外の時間を使わされてしまったこと(①関係)や売り上げの減少が立証できなかったり、売り上げの減少がそのまま休業損害として認められないという問題(②関係)などが頻出します。
まず、自営業者の方は、自身が休業してしまうとその間売り上げは上がらず、休業してしまうことで将来の顧客や仕事の獲得にも影響を与える為、怪我による体調不良があっても事業に従事しないわけにはいかないという現実があります。その場合であっても休業損害が全く請求できないというわけではなく、休業の中には業務が全くできなかったという中核部分もありますが、仕事自体はできたが、仕事を行うために治療や身体を休めなくてはならなかったという意味で十分な就労が出来なかった場合でも休業損害が認められる可能性があります(①関係)。 たまに、休業損害を払ってもらうことを前提に、仕事を安易に休んでしまう事業者の方がいますが、仕事を休むことは上記事業継続上のリスクがあるほか、実際に休業した売上の減少を基準とする計算方法は、立証が難しく(キャンセルした仕事の証拠は通常ありません)、結局、仕事は休んだのに損害額の立証ができなくて休んだ分の休業損害を請求できないという結論になる場合もあります(②関係)。
そのため、受注していた仕事のキャンセルが契約書などで立証できるならば、その仕事によって失った利益の損害の請求ができますが、そういった資料が乏しい場合には、安易に休業損害を保険から払ってもらおうとして、休業したり仕事を断ってしまうことはリスクであることがわかると思います。
では、自営業者は怪我をしても仕事も休めないのかというとそうではなく、請求の確実性としては少し下がりますが、「収入日額×期間1+収入日額×期間2×X%…」といった一種のフィクションによる休業損害の請求方法があります。上記計算式は難しいので簡単に示すと
事故日~1カ月 休業率 80%~100%
1カ月~3カ月 休業率 40%
3カ月~6カ月 休業率 20%
というように、治療期間を区切って、事故から近い期間は症状も強く多くの支障が事業に生じたとして、事業収入の基礎収入に高い休業率をかけて休業損害を算出し、治療にしたがって症状が改善していくにつれて休業率が漸減していくという計算方法です。
これであれば、事業に従事しながら収入をあげ、さらに本来ならもっと万全に事業に従事できたのにそれが出来なかったという意味での休業損害を上記方法で請求することで目に見えない事業上の休業損害を請求することも可能です。
注意が必要なのは、上記方法は、実際の仕事のキャンセルを立証する方法と異なり、一種のフィクション(見込計算)ですので、必ず認めらえるというものではないです。
例えば、事業は17時までに終わり、その後接骨院などで仕事に影響なく通院が出来ているとか、そもそも、事故の規模が大きくなく、怪我の程度がそこまで重たくない場合などには、相手の保険会社や裁判所も、上記の見込計算での休業損害の認定に慎重になる傾向があります。
結局、治療期間中にできる事業者のベストプラクティス(最適解)は、出来る限り仕事を継続しつつ、事業に支障が出たエビデンス(証拠)を残しながら、本来の事業で利益をあげつつ、事業への目に見えない支障を、上記の見込計算で請求するという方法だと思います。

事故手続①

事故に遭ったらどうしたらよいでしょうか?
「えっと、まず警察に電話して…」と何となく知っていますが、正確にお分かりになる方はそう多くないと思います。そこで、事故に遭った方がやっておくべき、やっておいた方がよい対応をお話させていただきます。
 まず事故に遭ってしまったら、当然負傷者を救護し、後続事故の発生を防止する措置を取りましょう。
 そして、次に警察に連絡しましょう。道路交通法72条で事故発生時の報告義務が定められています。この報告を行わないと、「事故証明書」が警察で作成されず、後日事故発生を理由とした保険利用が出来なくなる可能性もあります。
 「きちんと賠償はするから、警察には連絡せず、示談でやらせてほしい」などと事故の相手方から言われることがありますが、上記道路交通法72条に違反(3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金)するほか、事故当初は当事者双方が正確に損害の範囲を予測できないため、後日車両損害や怪我の損害が深刻になった場合、保険利用ができなくなったりすることで解決が困難になってしまう可能性があります。
 そして、忘れがちですが「ドライブレコーダー動画の保存」があります。ドライブレコーダー映像があれば、多くの過失案件がスムーズに解決できます。しかし、事故後、ドライブレコーダーをそのままにしておくと、映像の上書きによって事故映像が消えてしまうことがよくあります。事故の現場で動画を再生し、スマートフォンで撮影したり、修理業者さんでドライブレコーダー映像を保存してもらったり、自宅PCに映像を保存したり、自身の加入する保険会社の担当者に映像を送付しておくなどの保存をしておきましょう。
 また、事故の現場では、誠意をもって相手方と対応しましょう。親から「連帯保証人にはなるな、事故現場では謝るな」などと教えられた人がいるかもしれません。プロの観点からすると、事故現場で謝罪をしても過失割合に影響は与えません。事故発生までの運転動作が過失判断の対象になるので、事故後謝罪をしたなどの事情は過失割合には直接影響を与えません。ただ、事故態様にあたる事実を認めつつ謝罪すること(赤信号になってすぐに交差点に入ってしまい…、一時停止で全く減速もせずに交差点に入ってしまい…など)は、過失に影響を与える可能性がありますのでお気を付けください。
 怪我や不調を感じた場合には、「整形外科」を受診しましょう。「接骨院」への通院では、事故による怪我の診断として不十分になる可能性がありますので、医師免許がある外傷を対象とする「整形外科」を受診しましょう。「整形外科」への受診で気を付けたいのは、事故からなるべく早く受診することです。理由は①事故から時間が経過してから受診すると、事故と怪我との因果関係が認められなくなることがある(概ね10日~14日経過)②事故から時間を置いて受診すると、受傷が軽いとしてその後の保険手続きを進められてしまう可能性があることなどが主です。
 また、「整形外科」を受診した際は、症状や不調を感じる部位を全て申告しましょう。交通外傷による軟部組織の損傷は、ある程度時間をかけて完成するとの知見もあり、事故直後には、事故による緊張などにより症状を自覚しにくいことがあります。事故当初は首の痛みだけで診断を受けたら、その夜から腰の痛みを自覚しても、その後早期に(概ね事故から2週間以内)腰の診断も受けないと、交通事故治療では腰を対象とすることができません。  そして、人身事故にする場合には「診断書」を警察に提出するのを忘れないようにしましょう。人身事故にすることは、メリットデメリットがあります。免許の処分は、生じた怪我の重さによっても変わりますので、こちらにも過失がある場合双方が診断書を提出することで、免許処分が重くなる可能性があります(但し、免許処分は公安委員会が行いますので必ずという関係には立ちません)。また、物件事故でも、自動車保険を使うことに支障はありませんので対応してくれる保険会社によく確認しましょう。もっとも大事な点は、診断書を提出することで、静岡では警察作成の実況見分調書の開示を受けられるということです。実況見分調書は、ドライブレコーダーには現れない運転操作情報が記載されたり、ドライブレコーダーの映像が無い場合には、過失割合を判断する重要書類となります。
 そして、事故にあったら、被害者又は加害者関係なくご自身の加入する保険会社に事故報告をしましょう。被害者の方でも、傷害一時金などの事故によって給付される保険加入があるかもしれませんので、加害者側が保険対応してくれていても事故報告をすることをお勧めします。
 事故にあったら気を付けること、色々ありますが知っていると知らないとではその後の手続きが大きく異なりますので、知らなくて不利益を被ることを回避していただければと思います。

休業損害①

当事務所にご相談される交通事故被害者様の中に比較的多いのが、自営業者の休業損害を請求されたいという方です。
まず、自営業者の範囲ですが、青本では「商・工業、農林水産業、サービス業、その他いわゆる自由業(開業医、弁護士、税理士、プロスポーツ選手、芸能人、ホステスなど報酬・料金等によって生計を営む者)などに従事する者で、個人名で事業を営んでいる者」とされています。そのため、各種会社の役員については、この自営業者の休業損害が原則として請求できません。会社役員の休業損害についてはまた別の機会に書かせていただきます。
さて、自営業者の休業損害の問題点は①基礎収入と②休業期間・休業割合が大きな争点となることが多いです。
休業1日あたりの単価をいくらとするかが、基礎収入の問題です。
この基礎収入は自営業者であれば、確定申告書記載の所得額が原則で、青色申告控除がされている場合には、その控除額を引く前の金額を基礎とする、と解説されることが多いですが、実際には、これに固定経費を加えたものを基礎収入とする計算方法を取ることが多いです。厳密に言えば、基礎収入の所得と、固定経費の損害は別の概念なのですが、基礎収入を把握するために固定経費を加えるという評価方法も簡便だと思いますので、比較的主流なこの方法で計算することが多いです。
そうしますと、次に問題となるのは基礎収入に加えることができる固定経費の範囲をどのように考えるかということになります。この問題を知るには、固定経費の対になる概念である流動経費の概念を知る必要があります。流動経費とは、売上高に比例して増減する経費のことを指すとされていますが、同じ勘定費目であっても、業態によって流動経費になったり、固定経費になったりしますので、固定経費になりやすい目安の費目を参考に、業態ごとに個別にみていく必要があります。
固定経費の種類に中にも、文字通り月々経費として事業に計上されるものから、税務上の優遇措置によって認められている経費項目もあり、それらがあまり区別されずに固定経費とされて議論されてしまっているところが、この問題を複雑にしている原因となります。
こういった知識をもとに、一般に固定経費とされるものに、公租公課、損害保険料、減価償却費、地代家賃、リース料などがあります。業態にもよるものが修繕費、宣伝広告費、専従者給与などがあります。水道光熱費、消耗品、通信費などは基本的には流動経費とされますが、流水が必要となる生物を養殖・飼育する業態であれば水道代も固定費になる可能性があります。
相手保険会社の担当者の中には、この問題をきちんと勉強していて、法的に議論できる人もいるのですが、多くは、費目をみて「これは先生流動経費なんで基礎収入に加えられません」と杓子定規に話をする人もいますので、法的な理屈をきちんと説明して交渉できるかが大切となります。また、この自営業者の基礎収入で揉める背景には、弁護士が裁判における基礎収入を想定しているのに対し、損保担当者は、自賠責ないし任意保険における基礎収入の算定方法を基本に考えているため、どうしても両者の間で認識の相違が出てしまうことも理由にあげられます。
休業期間・休業割合については次の機会にお話させていただきます。

通院方法①

交通事故によって怪我を負ってしまうことがあります。
怪我をしたときには、その治療のために治療施設へ通院することになりますが、身体のことや事故の賠償という点からは望ましい通院の仕方、望ましくない通院の仕方がありますので紹介したいと思います。
まず、事故により怪我を負った場合には、原則として医師による診断を受ける必要があります。医師免許有資格者による診断が無い場合には、後に受傷を巡って争いになってしまいます。治療に対する色々な信条や考え方はあると思いますが、事故の治療費を払うのは自賠責保険や任意保険ですので「保険制度」からの支払をスムーズに受けるためにそこはルールに従ったほうがよいと思います。
次に、整形外科と接骨院の通院に違いがありますかとの質問をよく受けます。
慰謝料を算定するための通院実績という意味では、どちらに通院しても1日分の通院として評価されます。ただ、後遺障害の申請をする場合には、後遺障害診断書を作成するのは医師ですので、整形外科への通院が多い方がより充実した診断書の内容が望めます。他方で、接骨院・整骨院では、患部のみだけではなく、周囲筋にアプローチをすることで可動域を広げ、受傷による可動制限を緩和してくれるため治療実感を得られやすいというメリットがあります。
要は、どちらの通院にもメリット・デメリットがあるので、その方の治療の目的、就業状況、家庭の状況などに照らして選択していくことが大切だと思います。
また、通院の回数や頻度をどうしたらよいかという質問を受けます。
結論として症状に応じた通院を行うのが良いということになります。抽象的ですので誤解を恐れずに具体化しますと、外傷治療の一般論として、受傷直後が一番症状が強く、時の経過によって症状が緩和していきますので、受傷間もない時期は通院頻度が多く、症状の緩和に従って通院頻度が漸減していく通院方法が自然だと思います。保険会社からは、受傷時から通院頻度が変わらず過密な場合(毎日通院)や、受傷直後から過少通院(週に1回など)の場合には、治療による効果が上がっておらず治療効果のない状態=症状固定として保険の早期打ち切りを招いたり、受傷直後より通院が少ないということは通院の必要性を感じていない=症状が軽微として、保険の早期打ち切りといわれてしまったりします。
特殊なご相談に、鍼、カイロ、温泉、整体などの治療を行いたいというのもありますが、原則として医師の指示がないと保険制度での支払いは期待できません。保険制度は皆さんの保険料を使って行うことから、科学的に治療効果が検証できる必要があり、そういった意味で治療効果に個人差の大きい上記治療については現時点では医師の指示がないと保険制度の対象になりにくいというのが現状です。