慰謝料増額理由~入通院慰謝料②~

2023年9月8日 カテゴリー:入通院慰謝料

交通事故の主な損害項目に、入通院慰謝料があります。
この入通院慰謝料は、自賠責基準、任意保険会社基準、裁判所(弁護士)基準といった種類があることは昨今のインターネットの普及により広く知られているところです。
今回は、この入通院慰謝料が通常より増額される理由をお話します。
一般に慰謝料は、広く、当事者双方の社会的地位、職業、試算、加害の動機および態様、被害者の年齢、学歴等など様々な事情が斟酌されるとします。もっとも、毎年大量に生じる交通事故を解決するためには、実務的にはある程度類型的に被る精神的損害については、上記裁判所基準において考慮されているため、その考慮されている事情については基本的には増額理由になりません。
逆を言えば、事情としては考慮されているけれども、通常の程度を大きく超える苦痛が生じた場合や、そもそも非類型的事情で算定基準上考慮されていない事情については、慰謝料の増額理由になる可能性があります。
良く言及される慰謝料増額事由としては、①事故態様の悪質性(飲酒運転・赤信号無視等)、②事故後の行動が極めて悪質(轢き逃げ、罪証隠滅、被害者に対する不当な責任転嫁)、③胎児の死産などがあります。また、他にも、生じた後遺障害の程度が極めて重たい、治療経過が苛烈で通常の入通院の苦痛よりも大きい、スポーツ生命の断絶などが挙げられます。
ご依頼者から相談される理由としてよくあるものは、「相手は現場から逃げたんですが慰謝料って増額されないんですか?」「事故で仕事も休んだり、警察に呼ばれたり凄い迷惑なんですけど、慰謝料って増額されないんですか?」「相手は事故のことで嘘ばかりついているのですがこういうのは慰謝料増額されないのですか?」といった理由ですが、多くの場合これらの理由は慰謝料の増額にはならず、基本となる慰謝料算定基準の中に含まれてしまっているといえます。
こんなことを書きますと、「先生、轢き逃げは慰謝料増額理由って書いてありますよ」と怒られそうですが、轢き逃げが問題となった事案は、飲酒運転などで重大事故を起こして救護義務を果たさず、その後の刑事事件などでも犯行を否認したりなど轢き逃げそのものだけを理由とした増額というものは多くは見かけません。事故を起こした当初、驚愕により現場から立ち去ってしまい、しばらくして現場に立ち戻って事故手続きに服する場合や、後日みずからの事故を申告して自身の非を認めたような場合には、慰謝料増額に必ずしも当たるとはいえないかと思います。
慰謝料の増額理由は、個別性が高く、インターネット等の情報のみでは正しい判断はできないことから、もし苦しい状況に陥ってしまっている事故被害者様がおられましたら専門家への相談をお勧めいたします。