むち打ちで慰謝料はいくらもらえる?
2025年8月20日 カテゴリー:後遺障害

交通事故によってむち打ちになり、入院・通院をしたり、治療後も後遺症が残ったりする場合、どのくらいの慰謝料がもらえるのかが重要なポイントになります。
そこで以下では、むち打ちの概要や慰謝料相場について説明します。
むち打ちとは
むち打ちとは、交通事故によって頭が大きく揺さぶられ、首がむちのようにしなることで、首に大きな負担がかかり、痛みやしびれなどのさまざまな症状が生じる状態を総称したものです。
ただし、「むち打ち」は正式な医学的診断名ではありません。医学的には、次のような名称で診断されます。
- 頸椎捻挫
- 頸部挫傷
- 外傷性頸部症候群
- 神経根症
このように、むち打ちは日常的な呼び方であり、実際の診断名は症状や検査結果に応じて使い分けられています。
むち打ちの原因
交通事故におけるむち打ちは、追突や衝突、急停車によって身体に強い衝撃が加わり、頭が前後に大きく揺さぶられ、首がむちのようにしなったことが原因で発症します。
むち打ちの症状
むち打ちは、頭が前後に大きく揺さぶられることで、首が急激に伸展(上を向く動き)や屈曲(下を向く動き)を強いられ、通常の可動域を超える動きが生じることで発症します。
このとき、首まわりの筋肉や靭帯、神経などが損傷し、次のような症状が現れることがあります。
- 首や肩、背中の痛み
- 頭痛
- 吐き気
- めまい
- 耳鳴り
- 手足のしびれなど
むち打ちの診断には、医師による診察のほか、レントゲン検査に加え、症状に応じてCT検査やMRI検査なども用いられ、これらを総合的に判断して診断が行われます。
むち打ちの種類とその症状
むち打ちは、損傷部位や症状の違いにより、大きく5つの種類に分類されます。その内容は、下記表のとおりです。
| むち打ちの種類 | 症状 |
| 頸椎捻挫型 | むち打ちの多くは頸椎捻挫型に該当するといわれています。首周囲の筋肉や靭帯の損傷により首の痛みや可動域の制限をきたします。 |
| 神経根損傷型 | 首の骨の間から出ている「神経根」と呼ばれる部分に障害が起こると、その神経が支配する領域に知覚障害や筋力低下、反射の異常、放散痛などの症状が現れます。 |
| 脊髄症状型 | 頚椎の骨折や脱臼を合併することがあります。手の巧緻運動障害、痺れ、筋力低下、重度では下肢の麻痺、膀胱直腸障害が出現することがあります。 |
| バレー・リュー症候群型 | 自律神経系の交感神経に異常をきたし、頭痛や首の痛みとともに、めまい、耳鳴り、吐き気、視力低下、聴力低下などの症状が生じます。 |
| 脳脊髄液減少型 | 脳と脊髄を覆う硬膜が破れて、そこから髄液が漏れ出すことで、頭痛やめまい、吐き気、全身倦怠感などの症状が生じます。 |
むち打ちが後遺障害となる要件
自動車損害賠償保障法施行令が規定する後遺障害等級表によれば、むち打ちは、12級13号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」または、14級9号の「局部に神経症状を残すもの」に該当した場合に、当該後遺障害等級に認定されます。
そのためには、交通事故でむち打ちになり、症状固定時(治療を続けても、それ以上の症状の改善を望めない状態)に後遺症が残った場合に、「後遺障害等級認定」を申請し、「損害保険料率算出機構」の自賠責損害調査事務所の審査を経て、「後遺障害等級認定」を受けなければなりません。
むち打ちが、これら12級13号および14級9号の後遺障害となる要件は、以下のようになります。
12級13号の場合
12級13号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」とは、実務では、通常、「他覚的所見により神経系統の障害が証明される」必要があるとされています。これは、被害者の自覚症状が他覚的所見によって医学的に証明できた場合に該当すると理解されています。
12級13号の認定を受けるためには、被害者が訴える首の痛みやしびれ、頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気といった自覚症状が、レントゲン、CT、MRIなどの画像や神経学的検査によって異常所見として客観的に確認され、その異常が交通事故によるものであると認められる必要があります。
このように、自覚症状が他覚的所見によって医学的に裏付けられている場合、12級13号の後遺障害として認定される可能性があります。
なお、画像診断については、レントゲン検査、CT検査、MRI検査がありますが、MRI検査は必須とされています。そして、現実問題として、MRIの画像所見がなければ、12級13号として認定されるのは困難です。
14級9号の場合
14級9号の「局部に神経症状を残すもの」とは、実務では、通常「医学的に神経系統の障害が説明される」必要があるとしています。その趣旨は、被害者の自覚症状が、医学的に説明できた場合と理解されています。
14級9号の認定を受けるためには、首の痛みやしびれ、頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気などの自覚症状が、たとえ他覚的所見では確認できなくても、医師による理学的検査(触診、打診、聴診など)や、神経根症状誘発テスト、深部腱反射検査・筋萎縮検査などの神経学的所見と一致している必要があります。
加えて、治療の経過や症状の推移から、一貫した症状が見られ、将来的にも回復が困難であると判断されることが重要です。
このような場合には、被害者の自覚症状が医学的に説明可能と認められ、14級9号として後遺障害等級に該当する可能性があります。
むち打ちの慰謝料相場
交通事故により被害者が被った精神的損害(苦痛)に対する賠償金のことをいいます。
慰謝料は、本来、精神的損害の程度に応じて決まるため、被害者が被った損害の内容・程度、過失行為の内容、被害者の年齢、職業、収入、家族構成など、さまざまな事情が総合的に考慮されます。
交通事故によってむち打ちを発症し、被害者が入通院した場合には入通院慰謝料が支払われるほか、むち打ちの治療後も痛みやしびれなどの後遺症が残った場合には、入通院慰謝料とは別に、後遺障害慰謝料が支払われる場合もあります。
慰謝料の算定基準
実務では、交通事故における損害賠償を一定の基準に基づいて処理する必要があるため、慰謝料の算定には、自賠責保険基準、任意保険基準、裁判基準という3つの基準が用いられています。
以下では、それぞれの基準の内容について詳しく見ていきます。
自賠責保険基準
自賠責保険基準は、自動車損害賠償保障法に基づく自賠責保険の支払基準であり、加入が義務付けられている保険です。この基準は被害者に対する最低限の補償を目的としているため、慰謝料の金額も3つの基準の中で最も低くなっています。

任意保険基準
任意保険基準は、各保険会社が独自に定めている基準であり、金額の水準は自賠責保険基準と弁護士基準の中間程度に位置します。一般的に弁護士基準よりも低く設定されていますが、各社の基準は公開されていないため、ここでは詳細な説明を省略します。
裁判(弁護士)基準
裁判基準は、公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 上巻(基準編)」(以下「赤い本」といいます)に基づく基準で、最も高額になります。
裁判基準は、保険会社との示談交渉において、弁護士が基準とする損害賠償額の目安です。訴訟に発展した場合に裁判所で認められると見込まれる金額と同等であることから、「裁判基準」とも呼ばれています。
東京地方裁判所では、一般的にこの裁判基準(いわゆる「赤い本」の基準)に沿って判断される傾向があります。
後遺障害慰謝料の相場
後遺障害慰謝料は、交通事故により怪我を負って後遺症が残り、「後遺障害等級認定」を正式に受けた場合にのみ支払われる慰謝料です。
むち打ちで認定される可能性のある後遺障害等級は、上述したように、14級9号か12級13号になります。他覚的所見がない場合は、低い等級である14級9号が、他覚的所見がある場合には、高い等級である12級13号が認定されます。
上述した基準に基づく、むち打ちの後遺障害慰謝料は以下のとおりです。
自賠責保険基準の場合
自動車損害賠償保障法施行令・別表第2によれば、後遺障害慰謝料は次のようになります。
| 等級 | 14級 | 12級 |
| 後遺障害慰謝料 | 32万円 | 94万円 |
裁判基準の場合
裁判基準(赤い本)による後遺障害慰謝料は、次のとおりです。
| 等級 | 14級 | 12級 |
| 後遺障害慰謝料 | 110万円 | 290万円 |
まとめ
交通事故でむち打ちになり、入院や通院をした場合や、症状固定後に後遺症が残った場合には、適用される基準である自賠責保険基準、任意保険基準、裁判(弁護士)基準によって、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料の金額には大きな差が生じます。
慰謝料の金額や請求方法でお悩みの際は、ぜひHOPE法律事務所へご相談ください。
