後遺障害逸失利益とは?算定方法と労働能力喪失率の重要性

2025年7月24日 カテゴリー:後遺障害

後遺障害逸失利益とは?算定方法と労働能力喪失率の重要性

交通事故で怪我を負い、完治せず後遺障害が残ってしまった場合、後遺障害逸失利益を相手に請求できる可能性があります。

後遺障害については以下の記事で詳しく解説しています。

この記事では、後遺障害逸失利益について詳しく解説しています。

後遺障害逸失利益とは

後遺障害逸失利益とは、後遺症(後遺障害)が残り、労働能力が全部または一部失われたことで将来発生すると認められる収入の喪失・減少による財産的損害を指します。

休業損害が治癒または症状固定までの現実化した収入減少であるのに対し、逸失利益は症状固定後の将来の収入減少を対象とする点が異なります。

後遺障害による逸失利益の算定は、残った後遺障害の内容や程度を踏まえたうえで、将来の収入にどのような影響があるかを予測する必要があります。そのため、基礎収入、労働能力喪失率、労働能力喪失期間など、さまざまな点で争いが生じやすく、議論が複雑になることも少なくありません。

後遺障害に関する問題は幅広いため、今回は後遺障害逸失利益を請求する際の基本的な算定方法について説明します。

算定方法の基本

後遺障害逸失利益

基礎収入 × 労働能力喪失率 × ライプニッツ係数

基礎収入事故に遭わなければ得られたはずの収入額のこと。通常は、事故前年の収入や賃金センサス(統計上の平均賃金)などを基準に決定されます。
労働能力喪失率後遺障害によって失われた労働能力の割合を示す数値。後遺障害等級ごとに目安が定められており、逸失利益算定の重要要素となります。
ライプニッツ係数将来の収入を一括して現在価値に換算するための係数。逸失利益を計算する際に、労働能力喪失期間に応じて適用されます。

被害者の年齢によって計算方法は2つに分かれます。

有職者または就労可能者
基礎収入(年収) × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

18歳未満(症状固定時)の未就労者
基礎収入(年収) × 労働能力喪失率 × (症状固定時から67歳までのライプニッツ係数 − 症状固定時から18歳までのライプニッツ係数)

ここで注意が必要なのは、たとえば20歳で労働能力喪失率100%の後遺障害を負った場合、単純に年収×47年(67歳まで)ではなく、47年分に対応するライプニッツ係数を乗じるという点です。

これは将来貰える賠償金を一括で前倒しして受け取るため、将来の運用利益(利息相当分)を控除する考え方です。

労働能力喪失率とは

逸失利益の算定で特に重要なのが労働能力喪失率です。

  • 赤い本では、労働省労働基準局長通牒(昭32.7.2基発第551号)別表の労働能力喪失率表を参考に、職業、年齢、性別、後遺症の部位・程度、事故前後の稼働状況を総合的に判断するとされています。
  • 青い本では、自賠責保険の後遺障害等級に対応する労働能力喪失率を基準とし、職種、年齢、性別、障害の部位・程度、減収の有無・生活上の障害の程度など具体的事情を踏まえて定めるとされています。

※赤い本・青い本はいずれも交通事故の損害賠償額を算定する際に参考とされる基準書です。

実務上、自賠責の等級認定は非常に尊重されます。損害保険料率算出機構が認定事務を担い、多数の認定実績と蓄積されたノウハウをもつため、保険会社や裁判所でもその判断が重要視されます。

注意すべき後遺障害

ただし、後遺障害の種類によっては実際の労働能力への影響が少ないものもあります。

労働能力への影響が少ない後遺障害

  • 脊柱変形
  • 鎖骨変形
  • 歯牙欠損
  • 味覚脱失

などは、労働能力喪失率が争われやすい典型例です。このような場合、訴訟で厳密な立証を行うよりも、保険会社との交渉で部分的に認めてもらう方が被害者に有利なこともあります。

ただし、こうした判断には、残存した後遺障害の内容や医学的裏付けの強さを的確に評価できる専門的知識が必要です。

まとめ

後遺障害逸失利益は、金額が大きく計算も複雑であり、基礎収入、労働能力喪失率など多角的な検討が必要です。

HOPE法律事務所は、年間数百件の交通事故被害者の賠償交渉を取り扱っており、後遺障害等級認定案件も多数対応しています。顧問医師と連携した医学的分析も可能ですので、後遺障害でお悩みの方は、ぜひご相談ください。