後遺障害③~労働能力喪失率~

2023年12月20日 カテゴリー:後遺障害

後遺障害が残存しますと、働く能力が事故前より低下し、財産上の損害が生じるとされ後遺障害逸失利益の賠償請求ができるようになります。
問題は、この後遺障害逸失利益をどのように算定していくかですが、今回は、後遺障害の残存によってどの程度働く能力が失われてしまったのかという労働能力喪失率について説明します。
赤い本では、「労働能力の低下の程度については、労働省労働基準局長通牒(昭32.7.2基発第551号)別表労働能力喪失率表を参考とし、被害者の職業、年齢、性別、後遺症の部位、程度、事故前後の稼働状況等を総合的に判断して具体例にあてはめて評価する」とされています。青い本では「労働能力喪失率は、自賠責保険の後遺障害等級に対応する労働能力喪失率を基準として、職種、年齢、性別、障害の部位・程度、減収の有無・程度や生活上の障害の程度など具体的稼働・生活状況に基づき、喪失割合を定める」とされています。
青い本の記述にもあるように、実務では「自賠責保険の後遺障害等級」が重要な位置を占めています。自賠責保険は、多数の交通事故を公正・適正に処理するために統一的な判断を行っており、損害保険料率算出機構が障害認定事務を行っていますが、認定業務に関し相当程度の情報とノウハウが蓄積されています。そのため、訴訟外で保険会社と示談交渉を行う場合や、民事訴訟になった際にも自賠責における等級認定の判断はかなり尊重されているといえます。裁判官の一般的な感覚としても、「後遺障害等級に認定された事実があると、特段の事情の無い限り、後遺障害等級に見合った労働能力喪失率と慰謝料の額について一応の立証ができたと考えられる。」とされています。
もっとも、後遺障害の内容によっては、実際の労働に与える影響がとても少ないものもあります。労働能力喪失率を争われる典型的な後遺障害としては、脊柱の変形、鎖骨変形、歯牙欠損、味覚脱失といった身体能力そのものに直ちに影響を与えるとは限らないものが挙げられます。
そのような場合には、訴訟において厳密な立証活動を迫られるよりは、保険会社との訴訟外の交渉によって後遺障害逸失利益を部分的に認定してもらうほうが被害者にとって有利なケースも多くあります。しかし、そのような判断を行うには、残存した後遺障害の内容や、労働能力喪失に関する医学的な裏付けの強さがどの程度かなどを判断できる専門知識が必要になります。
交通事故の弁護につよいHOPE法律事務所は、後遺障害等級が認定された事案を数多く扱うとともに、顧問医師がいるため後遺障害に対する医学的な分析やアプローチも十分にできますので、後遺障害でお悩みの交通事故被害者様は、静岡で交通事故弁護の得意なHOPE法律事務所への相談をお勧めいたします。