通院方法④
2023年11月1日 カテゴリー:通院方法
以前通院方法に関する記事で、整形外科と接骨院の違いや通院頻度について説明をさせていただきました。今回は、「保険の打切り」を理解するために自賠責一括制度の説明と保険の「早期」打切りを避けるための通院方法を説明いたします。
まず前提問題として、よく聞く「保険の打切り」とはどういう現象なのでしょうか。ご相談者から、被害者の意見も聞かずに、一方的に打ち切るなんて許されるのでしょうかとのご質問を受けます。結論として、保険の打切りが一方的になされてしまうのは制度の仕組み上仕方がありませんし、違法の問題が生じる余地は殆どありません。その理由は自賠責一括制度の仕組みにあります。
そもそも、交通事故にあった被害者は、誰に何を請求できるかといいますと、基本的には事故の加害者に対し、直接治療費などの損害の賠償請求ができるにとどまります。法律的には、被害者が怪我の治療のために医療機関や接骨院などへ通院した場合、診療契約は、被害者とその医療機関の間に生じますので、治療費の支払義務は、法的には被害者の方に発生し、加害者の方が直接医療機関に治療費を支払う義務を負うわけではありません。あくまで被害者の方が、先に医療機関などに治療費を支払い、その支払額を加害者に対し請求できるにとどまります。
最終的には、適正な治療費は確かに自賠責から出ますが、あくまで被害者の方が受診し治療費を支払った後(医療機関は被害者からの申出による指図払いは基本的に応じてくれません。)に、自賠責に被害者自身で支払いを求めるのが自賠責制度の基本的な構造になっています。しかしこれでは、事故にあった被害者に重い負担となるため、各任意保険会社は、自身の契約者が加害者となった場合に、被害者が行うべき自賠責保険への治療費償還手続を代行し、任意保険と一括して治療費や慰謝料などの支払いを行う対応をしています。これを自賠責の一括対応と呼んでいます。
そして、相手が加入している任意保険会社は、相手が加入している自賠責保険では賄えない損害の賠償義務があるに過ぎず、自賠責保険で賄える範囲の損害については対応義務がありません。また、被害者の方が直接相手の任意保険会社に保険金の支払いを請求できるケースは保険約款上限られていますので、任意保険会社に当然に治療費などを支払うように請求はできません。
つまり、あくまで、この自賠責一括対応は、任意保険会社による被害者のためのサービスに過ぎません。そのためそのサービスをどの段階で撤回しても基本的に違法の問題も生じません。被害者の意見を聞くのはあくまで全体的な円満な解決を目指すという側面と、被害者の治療状況を確認して、治療期間を適切な範囲にとどめたいという保険会社の思惑とが重なって対応されているだけでして、被害者の通院継続の意見があっても任意保険会社が保険対応を終了することに法的な問題はありません。
そのため保険の打切りを回避するためには、この自賠責一括対応はあくまで円満解決のためのサービスに過ぎないという出発点を押さえなくてはなりません。
では次に、保険の「早期」打切りを回避するためのポイントを説明します。
「早期」打ち切りを招いてしまうポイントを知ることで、「早期」打ち切りを避けることができると思いますのでこの点を挙げていくと
・過剰通院、濃厚通院がなされていないか
・過少通院となっていないか
・症状の変遷がなく症状固定とみられるような主訴の申告になっていないか
・法的な基準を超える要求を行っていないか
・長期のタクシー利用や長期の休業損害の請求を行っていないか
・多部位の治療を行っていないか
・事故態様が一般的に小規模損害といわれるものになっていないか
となります。
上記ポイントを一つずつ説明したいのですが、分量も多くなってしまうため次回の記事に譲って今回はここまでにしたいと思います。