通院方法⑤

2023年11月8日 カテゴリー:通院方法

前回のブログに引き続き、「保険の打切り」を招いてしまう要因である①保険制度②治療経過③その他のうち、②治療経過から説明させていただきます。
「治療経過」を理由とした「保険の打切り」として、まず問題となるのが「過少通院」が挙げられます。
「過少通院」は、打撲捻挫系の受傷で、受傷直後から月に数回しか通院しないなど受傷内容からして通院が僅少な場合を指します。骨折などは骨癒合するまで安静加療をするので通院回数が月に1回であっても不自然ではないのですが、打撲捻挫系の治療で月に1、2回の治療しかないと、保険会社担当者からは「通院回数が少ないので、大分症状も収まってきていますね」「そうであれば今月末で保険対応は終了させていただきますね」というように、症状が軽いことの理由とされてしまいます。また、通院回数が少ないと、弁護士が介入した際に、弁護士基準と自賠責からの求償額との間に大きな差が出てしまうことから長期通院を許した場合のリスクが跳ね上がります。
次に「症状の変遷がなく症状固定とみられること」になります。
治療費を保険で賄うということは、保険制度を健全に運営するため、医学的治療効果が認められる状態でなければいけません。
しかし、ご相談者の中にも、事故当時を10とすると今の痛みはどれくらいですかとお聞きすると、数カ月経っているのに「7、8痛いです」「10痛いです」「15とかです」という回答が返ってくることがありますが、これは外傷の治療経過としておかしいため、保険打切りの対象となります。乱暴な言い方ですが、骨がめちゃくちゃに折れても、数カ月すれば自発痛自体は大幅に改善するはずです。しかし、数カ月経っても7割8割程度にしか改善していないとか、受傷時と痛みが変わらないとか、場合によって受傷時より悪化しているとの答えは、その怪我にとって治療が功を奏していないことを示しています。これはその怪我がこれ以上医学的に改善しないことを示していたり、今の症状が外傷以外の別の要因での疼痛であることを示すと考えられてしまいます。保険会社だけでなく、主治医にとっても、このような通常の整形外科的な症状経過と異なる申告を長期間されると、診察するモチベーションが下がります。主治医にとっては、交通事故による怪我以外の何らかの理由による症状申告があるのではないかと考えられてしまい、面倒ごとに関わりたくないとして保険会社に「症状固定相当」と医療照会に回答してしまう動機となります。主治医も、治療効果が現れているからこそ、治療を見直し、診療計画を立てて対応していくので、それに必要な期間は治療必要として保険会社に意見を出してくれるのです。
そして、「保険の打切り」を招くその他の要素として「法的な基準を超える要求」を行ってしまっていることです。
「完治するまで通わせてくれればよい」「元の身体にしてくれればよい」「この症状は事故のあとからだからこれも当然保険でみて欲しい」「通院が終わるまで休業補償を見て欲しい」「症状が辛いので通院はすべてタクシーで通いたい」「私の身体を一番わかっている鍼や整体の費用を必ず負担して欲しい」などです。これらは法的な因果関係が肯定できるか不明で、自賠責からの償還がなされない可能性が高いことから、このような要求を強く持つ患者に対して、保険対応を打ち切らざるを得ないケースもあります。このような対応を主張してしまう患者に多いのが、患者自体の過失が「0」の場合が多いです。「こちらは完全な被害者なんだから加害者が責任を持つのが当然だ」との感情が根底にあるのかもしれませんが、治療が相当か、保障が相当かは、事故の過失の割合とは関係がありません。過失が9割ある加害者でも、骨癒合が遷延していれば通常より長期間の治療期間をみる必要がありますし、過失が0の被害者でも症状がほとんどなくなれば治療期間が短くても保険治療は終わります。過失の割合は保険治療の長さを決めるファクターではないのです。
また「事故態様が一般的に小規模損害といわれるもの」も早期打ち切りの対象です。
例えば、修理金額が30万円以下、駐車場内での事故、重量差のある衝突、低速度での衝突などです。
いずれも事故による衝撃が小さいため、長期通院が必要ではないとされて保険が打ち切られます。修理金額のみでは衝撃の大きさや怪我の重篤性はわかりませんが、大雑把に事故の規模からする衝撃の程度を計る一つのわかりやすい基準となります。自賠責の審査にも影響するのも大きいですね。また、駐車場内の事故も、車両が高速度で走らない場所ですので大きな怪我が生まれにくい場所のため自賠責の審査が厳しくなります。また、ダンプにコンパクトカーがぶつかったとか、車に自転車や原付がぶつかったという場合は、重量差があるため大きな衝撃が伝わらないとされるためやはり保険期間を短期間に設定される傾向にあります(場合によっては受傷との因果関係を争われます。)。低速度(ブレーキを離したさいに進むクリープ現象や、渋滞中にうっかり発進してしまった場合など)での衝突も、重量差がある衝突と同じような判断をされてしまいます。
これまで、色々な打切り要因を見てきましたが現実にはこれらの要因が複数に絡んだり、これ以外の要因が絡むこともよくあります。やはり大事なのは、こういった「治療期間中の弁護に強い弁護士」に相談することですね。治療期間中の保険会社の対応に困ったら、静岡の交通事故の弁護に強いHOPE法律事務所にご相談ください。