通院方法③

2023年10月27日 カテゴリー:通院方法

前回のブログでは、「保険の打切り」がどういう制度に基づいてなされるかについて説明させていただきました。今回は、その中で触れた保険の打切りを招く要因について説明させていただきます。
交通事故による怪我の治療に対して、保険制度を利用して治療費を支払うという制度であることを念頭におき、保険の打切りを招いてしまう要因を独断で①保険制度②治療経過③その他に分けて説明します。
【保険制度上の打切り要因】
保険制度上の打切り要因としては、「過剰通院、濃厚通院」「多部位の治療」「長期タクシー利用、長期の休業損害の請求」といったものがあります。
前回のブログで、自賠責一括制度の説明をさせていただきました。加害者が加入している保険会社は、自賠責の範囲(傷害枠120万円)を超える責任部分を担当しているけれども、自賠責部分も一緒に対応していることを説明させていただきました。
冒頭で説明しました保険制度上の打切り要因は、この自賠責の傷害補償枠120万円の限度枠と関連します。
簡単にいえば、被害者の方の治療費、交通費、文書料、休業損害、慰謝料などが自賠責保険の保証枠120万円に収まれば、保険会社は自分の責任部分(保険会社のお財布)からの出捐はないことになるため、保険会社には早期打ち切りを行う絶対的な動機が存在するのが原因です。
保険会社は、独自のシステムで治療中の通院の回数や休業損害の支払等から、賠償金の積算を行っており、その金額が120万円に近づくと自賠責保険の打切りを検討します。もちろん120万円に近付けばすぐに打切りをするわけではありませんが、多くの他覚所見のないむちうち損傷事案では、自賠責の枠を超えてまで補償を行おうという姿勢は低いことから打ち切りの対象となります。
このような観点から、上記打切り要因を説明しますと、
まず①の要素ですが、「過剰通院、濃厚通院」は、毎日通院に行ったり、通常の治療頻度を越えて消炎鎮痛処置、機能改善リハビリ、ブロック注射の施行などを頻回に行うことを指しています。
外傷による保存療法は、毎日実施したからといって回数分治療効果が比例的に増加するわけではありません。
過剰・濃厚な通院は医学的な正当性が薄弱になるとともに、不用に治療費を増大させることで、早期に保険会社のお財布から治療費を支出しなければならない状態になります。保険会社の肩を持つわけではありませんが、大きな事故で数百万円の治療費がかかっても保険会社は、受傷が相当で、それに対する治療費が適正であれば治療費が高額になっても支払わないわけではありません。あくまで、他覚所見がないむちうち損傷のような症状の保存療法を典型例とする治療については、どうしても自賠責の枠との関係で打ち切りの問題がでてきます。
同様に、「長期タクシー利用」は交通費という被害者の手元に残らない費用で自賠責保険の枠を使うため早期打ち切りに繋がります。タクシー利用が認められるかは、過失の多寡とは関係ありませんので、追突事故のような自身に過失がない事故だからといって症状からして必要性の薄いタクシーでの通院を継続していれば打切りはすぐに迫ってきます。また、「休業損害」についても、確かに事故で身体が辛く仕事を受傷直後に数日休むのは一般的にはあるかもしれません。しかし、他覚的所見がないむちうちの症状で1カ月以上も連続して全休したりすれば、本来働けばもらえたお給料を、自賠責の枠から支出するだけで早期の打切りを招きます。最終的に手元に残るお金は働いていない分少ないのが通常です。「多部位の治療」についても、身体に多くの負傷部位が生じるのはやむを得ないことですが、全ての怪我が同じように症状が続くわけではないため、症状が軽快した部位については治療対象から外していくことが大切です。保険会社も、傷害部位が多いことは多少考慮しますが、部位が増えた分だけ支出できる治療費の予算が倍増していくわけではないため、治療費の削減を被害者も意識する必要があります。
分量が多くなってきましたので、打切り要素②以降は次回のブログに持ち越させていただきますね。