後遺障害②
2023年10月18日 カテゴリー:後遺障害
交通事故に遭い怪我を負った方の中には、怪我が完治せず後遺障害として残存してしまう方もいます。その場合には、後遺障害逸失利益が相手に請求できることになります。
後遺障害逸失利益とは、被害者に後遺症(後遺障害)が残り労働能力の全部または一部を喪失したために将来発生すると認められる収入の喪失・減少を内容とする財産上の損害のことをいいます。休業損害の算定が、治癒又は症状固定までの間に現実化した収入の減少を問題とするのに対し、逸失利益は死亡または後遺症による、症状固定後の将来の収入の喪失・減少を対象とするところに違いがあります。
後遺障害を理由とした逸失利益の算定は、残存した後遺障害の内容、程度を前提としつつ、その将来の収入への影響の有無・程度を予測するという難しい作業を行うことから、基礎収入、労働能力喪失率、労働能力喪失期間といった様々なレベルの問題で争点が生じ争いも深くなりやすいといえます。
後遺障害に関する問題は多岐にわたることから、今回は、後遺障害逸失利益を請求する上での基本的な算定方法について説明いたします。
青い本によれば、「基礎収入額×労働能力喪失期間×喪失期間に対応するライプニッツ係数の算定方式で算定する。」とされています。そして、問題となる被害者の年齢で計算方法を大きく2つに分けています。
①有職者又は就労可能者
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
②18歳未満(症状固定時)の未就労者
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×(症状固定時から67歳までのライプニッツ係数-症状固定時から18歳に達するまでのライプニッツ係数)
この計算式で注意が必要なのは、20歳で労働能力喪失率100%の後遺障害を負った場合に、単純に1年間の収入100%を基準に、67歳までの47年間を乗じて逸失利益を算定するのではなく、47年に対応するライプニッツ係数を乗じるにとどまる点です。
これは、将来貰える賠償金を前倒しで、一括で受け取るために将来までの運用利益を将来利息という形で控除することを指しています。
簡単に表現すれば、今1億円全額使えるという利益と、50年間で1年ずつ均等に総額1億円を貰えるという利益は、経済的には同じではないため将来受け取れるはずの金銭を現在一括でもらえるという場合には、運用利益を将来利息という形で控除するのです。
また、②の計算式に関しては、症状固定時点で18歳未満の被害者は、そもそも症状固定時から働き始めるまでの期間は、収入を得られない期間であるため就労可能年数の算定の上でも、就労開始までの期間を控除するという処理がなされるのも注意が必要です。
後遺障害逸失利益は金額も大きくなりますし、賠償金の算定も非常に難しいです。そのため被害者の特性に応じて算定方法を工夫する必要があるため、年間数百件の交通事故被害者の賠償交渉を取扱う当事務所に是非お任せください。