時価賠償 〜車両損害②〜

2023年10月11日 カテゴリー:車両損害

事故によって、車に損傷が生じると修理費が請求できます。しかし、修理費の金額が、「時価額(消費税含)+買替諸費用」を越えてしますと「経済的全損」とされ、「時価賠償(消費税含む)+買替諸費用」が賠償の上限となります。
それでは、この「時価」とはどのように判断するのでしょうか。
最高裁判所では、時価を、原則として同一の車種・年式・型・同程度の使用状態・走行距離等自動車を中古車市場において取得するに要する価格によって決定すべきとされています。
しかし、それ以上にどのような資料でこの、中古車市場において取得するに要する価格を決めていくかの説明はされていませんので、様々な種類の資料を、具体的な事故車の性質に応じて使い分けていくことになります。
そこで、時価算定に用いる代表的な資料を説明いたします。
まず、オートガイド自動車価格月報(通称「レッドブック」)があります。レッドブックには、下取(買取業者に買取をお願いした場合の価格)、卸売(自動車業者が他の業者に販売する場合の卸価格)、中古小売価格(機能、外装、内装がその年式に見合うように整備された状態で、保証付きで販売される車両本体のみの価格(消費税が含まれない))価格が表示されています。通常、時価賠償としてはこの「中古小売価格」を基準とすることが多いです。
他には、インターネットの代表的な中古車販売検索サイトを用いて、同種、同型種、同程度の種の平均価格を算出する方法があります。通常はレッドブックとインターネットの検索による平均を比較して高額な方を採用すれば市場における平均価格とそう乖離するケースは少ないと思います。
この車両の検索をする際に必要となる「車両のグレード」については、車両の所有者に聞いてもわからないことがあります。グレードは車台番号がわかると検索が可能です。車検証等から車台番号を調べ、その自動車のメーカーがグレード検索システムを提供しているケースがありますので、車台番号を入力するとグレードが判明することがあります。
特殊な改装や希少車両などについては、レッドブックや一般的な中古車販売サイトには記載がないことから、購入時資料、改装資料、業界の特殊な販売実績などを資料に個別に認定していく必要があります。他には、古い年式や、状態の悪い車両の場合には、税法上の減価償却の考え方に準拠する方が残存価値が多いといったケースもあります。
これらの時価交渉を行えば、時価交渉を行わなかった場合と比較して数十万円の賠償額の違いが生じることがありますので、物損についても弁護士に相談されることをお勧めいたします。