車両損害①

2023年10月6日 カテゴリー:車両損害

車で交通事故に遭いますと、当然車の修理が必要となります。車の修理内容を巡っては様々な問題が生じますが、修理費用に関する問題を少し取り上げたいと思います。
1 未修理の場合の修理費請求
まず、修理をしなくても修理費用相当額の請求ができるかについてですが、これについては数多くの裁判例が、修理をしなくとも修理費用相当額の賠償請求を認めています。
問題は、修理をしない場合の修理額の算定をどのようにするかです。
損傷の程度が比較的軽微で、外部から見た判断によって必要な修理箇所や内容が特定できる場合には、一般的な協定作業を通じて概算修理費による修理額が賠償の対象となります。
しかし、問題は、車体の損傷がある程度深く、実際の修理を行わなければ正確な修理費が算定できない場合です。これは、外板パネルの中の損傷状態は、実際に修理のためにパネルを外して確認しなければならず、修理しないにも関わらず、自動車のパーツを外して修理の査定をするのであれば、誰がその査定費用を負担するかという問題点が出てきてしまいます。
そのため多くの事案では、本来修理をすればもっと高額の修理費が請求出来たけれども、概算見積の限度でしか修理費相当額の賠償を受けられないケースが生じることになります。
2 未修理の場合の消費税相当額
最近は少なくなりましたが「修理しないのであれば、消費税は抜いた修理費の賠償となります」と話す損保担当者が昔はわりといました。そのたびに、消費税も修理費の一部に含まれますよと裁判例などを紹介しながら交渉をよく行ったものです。
3 経済的全損と買替差額
赤い本では「修理費が車両時価額(消費税相当額を含む)に買替諸費用を加えた金額を上回る場合には、経済的全損となり買替差額が認められ、下回る場合には修理費が認められる」と説明しています。
この「車両時価(消費税相当額を含む)+買替諸費用<修理費
の状態を経済的全損と評価するとしています。
この数式の中にあるように、経済的全損になってしまった場合の交渉方法は次の通りです。
1 車両時価が適正なのか
2 消費税が車両時価に考慮されているか
3 全損の判断で買替諸費用が考慮されているか
これでまずは経済的全損が妥当かどうかをチェックしていきます。
それでも全損になる場合には、上昇した時価を基準として買替差額の賠償を受け ます。買替差額とは、青い本は「全損の場合、通常は交換価値(時価)と被害車両を処分した金額との差額(買替差額)を賠償額とする」と説明しています。
相手保険会社が、全損時価賠償を行っている場合には、事故車両を引き上げることもあるので買替差額ではなく、時価賠償を受けることも多いです。また、過失などがあり、時価賠償を受ける場合でも、買替差額までしか払いませんと頑張る担当者は最近では減ったように思います。
引上げされる場合でも、事故現状車相当額を賠償金から控除する方法によって、自身の手に残る経済的利益を最大化する方法もあります。
こういった地道な作業を積み重ねていきますと、単に全損ですと言われた場合よりも数十万円程度手に残る金額が違ってくることがあります。
しかし、事故に遭ってすぐに弁護士に相談できる方ばかりではないため、多くの被害者の方はこのような物損の交渉方法があることを知らずに示談に応じてしまっていることも多いです。
まさに「事故にあったらすぐHOPE」(商標登録済)ですね。