買替諸費用①

2023年8月18日 カテゴリー:代車費用

今回は、買替諸費用という忘れられやすい損害項目についてお話します。
買替諸費用とは、事故車両が全損になった際に、事故車両の代替車両を購入した際に生じた車両諸費用のことを指しています。
買替諸費用は、請求できるにもかかわらず忘れられやすい損害項目ですのでその理由を説明いたします。
まず、買替諸費用が問題となるのは、ご自身の事故車両の損害が「全損」(経済的全損)となった場合です。「全損」とは、「事故時の時価+買替諸費用<修理費」の場合を指しています。
この「全損」の場合には、修理費が賠償の対象にならず、時価賠償がなされることになります。例えば、事故車両の事故時の時価が60万円、修理費が100万円という場合、賠償の対象となるのは事故時の時価60万円ということになります。
ではなぜ、「全損」の場合に買替諸費用の請求が忘れられてしまうのでしょうか?
理由はいくつかあります
①事故車両は全損だったけれども、自宅に別の車があったので買替をしなかったためそもそも示談までに買替諸費用が生じなかった
②相手保険会社としては、事故被害者が買替諸費用を請求できると知らなければ、教える義理も義務もないため、事故被害者が知らずに終わってしまう
③被害者側の会社としても、車両保険がついている場合、車両保険の金額さえ払ってしまえば自分の仕事は終わりのため、契約者が追加で請求できる買替諸費用については積極的に教えない

などの理由があります。 一般に、物損は、修理費、車両時価など車の価値はある程度客観的に決まってくることから、工夫しても賠償金額が上がりにくいといえます。
しかし、全損になった場合でも、「事故車両の時価上昇交渉」「事故車両の適正金額での処分」「買替諸費用の請求」といった工夫を全て行えば、これらの工夫を全て行わなかったときに比べて多いときは数十万円の賠償額の差が出ることもあります。
ただ、事故後間もない時期にしか、これらの交渉が出来ないことや、労力の割に上昇する経済的効果が、慰謝料などの損害の場合よりも小さいことから、一般の法律事務所さんはこの細々とした物損処理をしてくれません。簡単にいえば、「細かくて面倒なことは被害者さんが自分でやって、治療が終わって慰謝料等の請求の段階になったら相談にきてよ」という法律事務所がメインではないかと思います。
しかしこれでは、事故の最初にこそ慣れない事故処理で苦しむ依頼者を救えませんし、治療段階で関与しなければ適切な人身賠償も実現できないことから、当事務所ではこのような方針はとっていません。
なるべく事故から早期に、物損事故の処理についても一緒に悩み、考え、治療経過にも積極的に関与して、不当な打切りや難しい症例を一緒に考えていこうと思っています。それこそが、依頼者の希望になりたいという当事務所の理念なのです。