交通事故の過失割合とは?決まり方・基準・修正要素を解説

2025年7月24日 カテゴリー:交通事故

交通事故の過失割合とは?決まり方・基準・修正要素を解説

交通事故では、示談がすぐにまとまらないことがあります。その大きな要因の一つが、過失割合に関する争いです。被害者が、保険会社から提示された過失割合に納得できない場合、示談交渉が長期化することになります。

では、交通事故における過失割合は、どのようにして決まるのでしょうか。

以下では、過失割合とは過失割合の決まり方過失割合の基準基本となる過失割合および過失割合の修正要素などについて説明します。

過失割合とは

交通事故の多くは、当事者の一方だけに原因があるのではなく、双方に過失があるケースが一般的です。

過失割合とは、双方に過失がある場合に、それぞれの責任の度合いを比率で表したものです。たとえば、どちらにどれだけの責任があるのかを、30:7050:50といった数値で示します。

ところで、民法722条2項は「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」と定めており、これは過失相殺に関する規定です。

過失相殺とは

損害賠償額を定める際に、被害者にも過失がある場合には、その割合に応じて賠償額を減額する制度です。

また、多数の交通事故訴訟をある程度統一的に処理するため、事故の態様ごとに過失割合を定めた過失相殺基準が設けられています。


このように、過失割合は損害賠償額を算定する上で非常に重要な要素となっています。

過失割合の決まり方

交通事故では、保険会社が独自に考えた過失割合に基づいて過失相殺を行い、その上で示談金を提示してくるケースが多いと考えられます。そのため、交通事故の過失割合は保険会社が決めていると思っている方も少なくありません。

しかし、交通事故の損害賠償について示談が行われる場合、過失割合も当事者同士の話し合いによって決める必要があります。つまり、過失割合は当事者双方の合意によって決定されるのです。

また、過失割合について当事者の合意が得られず訴訟に発展した場合には、当事者双方の主張や立証に基づき、裁判所がこれまでの裁判例などを参考にしながら、事案に応じて個別具体的な事情を考慮し、過失の有無やその割合を認定することになります。

過失割合の基準

過失割合については、前述のとおり、当事者双方の合意、あるいは訴訟となった場合には裁判所の判断によって決定されますが、まったく基準がないわけではありません。

裁判所は、基本的に、過去の裁判例を参考にして過失割合を判断しています。特に、実際の事故の態様と類似した事案で、どのような判断がなされたのかを基準とすることが多くあります。

また、当事者同士で過失割合を決める場合にも、仮に裁判となったときにどう判断されるかを見越して検討されるため、やはり過去の裁判例が参考にされるのが一般的です。

さらに、実務の現場では、東京地裁民事交通訴訟研究会編「別冊判例タイムズ38号 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準〔全訂5版〕」(以下「判タ38号」といいます)や、公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 上巻(基準辺)」(以下「赤い本」といいます)が広く用いられており、事案の態様ごとに、基本となる過失割合や修正要素を踏まえて判断されるのが一般的です。

そこで、次に「判タ38号」や「赤い本」をもとに、基本となる過失割合および修正要素について見ていきましょう。

基本となる過失割合および過失割合の修正要素

一般的な事故態様の場合、基本となる過失割合およびその修正要素が、どのような割合になるのかを以下に示します。

修正要素には、当事者に不利となる加算要素と、有利となる減算要素があります。ただし、複数の修正要素がある場合には、それぞれの数値を累積的に適用するか、あるいは限定的に適用するかは、事故の態様に応じて判断されます。

下記の説明で用いている「著しい過失」と「重過失」の意味は、以下のとおりです。

「著しい過失」に該当する行為の例

  • 脇見運転などによる著しい前方不注視
  • 酒気帯び運転
  • ハンドルやブレーキの著しく不適切な操作
  • 概ね時速15km以上30km未満の速度違反(※高速道路は除く)
  • 携帯電話などの無線通話装置を使って通話したり、画像を注視しながら運転する行為

「重過失」に該当する行為の例

  • 酒酔い運転
  • 居眠り運転
  • 無免許運転
  • 概ね時速30km以上の速度違反(※高速道路は除く)
  • 過労・病気・薬物の影響などにより、正常な運転ができないおそれがある状態での運転

なお、歩行者側の黄信号には、歩行者専用信号機の青点滅も含まれます。

歩行者と自動車の事故

自動車直進の場合の基本となる過失割合

道路状況歩行者の
過失割合(%)
自動車の
過失割合(%)
信号機のある
横断歩道上
青信号(0)赤信号(100)
青信号で横断を開始したが、途中で黄信号に、さらに赤信号に変わった(0)赤信号(100)
赤信号で横断を開始したが、途中で青信号に変わった(10)赤信号(90)
黄信号(10)赤信号(90)
赤信号(20)赤信号(80)
黄信号で横断を開始したが、途中で赤信号に変わった(30)青信号(70)
赤信号(50)黄信号(50)
赤信号(70)青信号(30)
信号機のない
横断歩道上
(0)(100)

自動車右左折の場合の基本となる過失割合

道路状況歩行者の
過失割合(%)
自動車の
過失割合(%)
信号機のある
横断歩道上
青信号(0)赤信号(100)
青信号で横断を開始したが、途中で黄信号に、さらに赤信号に変わった(0)赤信号(100)
赤信号で横断を開始したが、途中で青信号に変わった(10)赤信号(90)
黄信号(10)赤信号(90)
赤信号(20)赤信号(80)
黄信号(20)黄信号(80)
赤信号(30)黄信号(70)
青信号(0)青信号(100)
黄信号(30)青信号(70)
赤信号(50)青信号(50)
信号機のない
横断歩道上
(0)(100)

自動車直進・右左折の場合における歩行者の過失割合の修正要素

道路状況加算・減算(%)加算要素減算要素
信号機のある
横断歩道上
5夜間、幹線道路、直前・直後横断、佇立、後退
5~10住宅街・商店街、児童(6歳以上13歳未満)、高齢者(65歳以上)、集団横断、歩車道の区別なし
5~20幼児(6歳未満)、身体障害者等、自動車の著しい過失
10~30自動車の重過失
信号機のない
横断歩道上
5夜間、幹線道路、直前・直後横断、佇立、後退住宅街・商店街、児童(6歳以上13歳未満)、高齢者(65歳以上)、集団横断、自動車の著しい過失、歩車道の区別なし
10幼児(6歳未満)、身体障害者等、自動車の重過失

※歩行者と自動車の過失割合を一部抜粋して紹介しましたが、他にも様々な組み合わせがあります。

まとめ

交通事故では、過失割合をめぐって、示談交渉や裁判で争いになることが少なくありません。過失割合は、当事者双方の合意によって決定されますが、訴訟に発展した場合には、裁判所が判断することになります。

実務上は、「判タ38号」や「赤い本」といった資料が参考にされており、事故の態様ごとに、基本となる過失割合や修正要素が定められています。

交通事故に遭い、過失割合についてお困りの方は、どうぞお気軽に弁護士法人HOPE法律事務所までご相談ください。