休業損害-会社役員の場合
2025年7月17日 カテゴリー:休業損害

会社の役員(取締役や監査役など)が交通事故に遭って会社を休業した場合、その休業損害を請求できるかどうか、また後遺障害が残った場合に逸失利益をどう算定するかについては、非常に難しい問題があるので別の記事にて解説いたします。
この記事では、特に「会社役員の休業損害」について焦点を当て、分かりやすくご説明します。
休業損害の基礎的な解説は以下の記事をご覧ください。
「会社役員は休業損害を請求できない」って本当?
よく耳にするのが、「会社役員は休業損害を請求できない」という言葉ですが、これは正確ではありません。正しくは、「休業損害を請求できないことが多い」というのが正しい表現です。
その理由は、会社役員個人に「損害」が生じていないケースが多いためです。
会社役員と会社の関係は、従業員と異なり「雇用契約」ではなく「委任契約」です。つまり、役員には出社義務がないため、多少の休業や通院があっても、株主総会や取締役会で定められた役員報酬がそのまま支払われる限り、役員個人には休業による損害が発生しないという考え方がとられます。
請求が認められるケースもある
とはいえ、会社役員がまったく休業損害を請求できないわけではありません。
たとえば、骨折などで長期の通院が必要となり、正式な手続きを経て役員報酬が減額または不支給とされた場合には、役員個人に損害が生じたと評価され、休業損害の請求が可能になることがあります。
ただし注意すべき点として、会社の役員報酬は、たとえ株主総会などで減額の決議がなされたとしても、それだけで税務上ただちに有効になるとは限りません。事故対応のためだけに一時的に報酬を減額した場合には、その報酬減額が会社の経費として認められない可能性があるため、慎重な対応が必要です。
「会社」が請求できることも
役員が実際には業務に支障をきたしていたとしても、会社が定めどおりの報酬を支払っていた場合、役員個人に損害は発生していないため、原則として休業損害は請求できません。
しかし一方で、会社は休業中の役員に対して報酬を支払ったことによって損害を被ったと見ることもできます。このような場合には、会社が「反射損害」として、保険会社などに賠償を請求できる可能性があります。これは、休業損害を立て替えた会社が損害を被ったという構成であり、賠償者代位の考え方に近いものです。
債権者が損害賠償として債権の目的である物や権利の価額の全部の支払いを受けた場合に、債務者が当然にその物や権利について債権者に代わる権利を取得する制度(民法422条)
このように、会社役員の休業損害は請求できる可能性があるものの、法的な関係性や手続き、必要資料(株主総会議事録など)が複雑なため、実際に請求されることは多くありません。
まとめ:会社役員の休業損害について
会社役員の休業損害は、雇用関係にある従業員とは異なり、法的にも税務上も複雑な問題が絡みます。請求の可否や方法については、事案ごとに丁寧な検討が必要です。
交通事故により業務に支障が出た場合や、役員報酬の扱いに不安がある方は、交通事故に強いHOPE法律事務所へお気軽にご相談ください。
事案ごとに請求の可否を判断し、必要に応じて資料作成のサポートも行っております。専門的な視点から、最適な対応をご提案いたします。
