後遺障害等級9級とは?症状や認定基準、慰謝料などを解説
2025年8月22日 カテゴリー:後遺障害

交通事故による後遺障害は、症状の重さに応じて1級から14級までに分類されており、数字が小さいほど症状が重くなります。なかでも9級は、他の等級と比べて最も多い17種類の症状が認定対象とされています。
「後遺障害9級に分類される症状にはどのようなものがあるの?」「他の等級とはどのように区別されるの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、後遺障害等級9級の主な症状と認定基準および後遺障害慰謝料と逸失利益について解説します。後遺障害認定の申請を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
後遺障害等級9級の主な症状と認定基準
後遺障害等級は、1級から14級までに分類されており、数字が大きくなるほど症状は軽くなります。9級は、中ほどに位置する等級です。
後遺障害等級9級の認定対象となる症状は、以下のとおりです。
- 1.両眼の視力が〇・六以下になつたもの
- 2.一眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
- 3.両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
- 4.両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
- 5.鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
- 6.咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
- 7.両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
- 8.一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
- 9.一耳の聴力を全く失つたもの
- 10.神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
- 11.胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
- 12.一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの
- 13.一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの
- 14.一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの
- 15.一足の足指の全部の用を廃したもの
- 16.外貌に相当程度の醜状を残すもの17 生殖器に著しい障害を残すもの
- 17.生殖器に著しい障害を残すもの
それぞれの症状について、具体的な内容を解説します。
1.両眼の視力が〇・六以下になつたもの
「両眼の視力が0.6以下になったもの」とは、両眼でのメガネやコンタクトレンズを装着した矯正視力が0.6以下になった状態を指します。当然ですが、事故前から視力が0.1以下の場合には認定対象とはなりません。
交通事故が原因の視力低下を証明するには、過去の眼科検診などで交通事故前の視力検査結果が残っていることが必要となります。
なお、両目の視力が0.1以下になった場合は、より重い後遺障害等級6級1号に該当します。
2.一眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
9級1号と同様に、ここでの視力は矯正視力のことです。片目の矯正視力が0.06以下になった場合は、9級2号が認定されます。
交通事故が原因で片目を失明してしまった場合や矯正視力が0.02以下になってしまった場合は、より重い8級1号が認定されます。
3.両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
「半盲症」とは、視界の右半分または左半分が見えなくなる視野障害のことをいいます。「視野狭窄」は視野が狭くなる視野障害のこと、「視野変状」は視野の一部に点状や斑模様の欠損が生じる視野障害のことです。いずれの症状についても、視野が欠けて通常時の60%以下となった場合、後遺障害等級9級3号が認定されます。
なお、視野障害が片目だけの場合については、後遺障害等級13条3号が認定されます。
4.両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
まぶたの「著しい欠損」とは、目を閉じようとしても、まぶたの欠損により角膜を完全には覆いきれない状態のことを指します。
なお、まぶたの著しい欠損が片目にとどまる場合には、11級3号が認定されます。
5.鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
「鼻を欠損」とは、鼻の軟骨部の全部もしくは大部分が失われた状態のことです。鼻の欠損により、呼吸や嗅覚といった鼻の機能に著しい障害が残った場合、9級5号が認定されます。
なお、鼻の欠損が「外貌に著しい醜状を残すもの」に該当する場合には、より重い7級12号が認定されます。醜状が鼻だけに止まらない場合には、9級5号と7級12号の併合により併合6級が認定される可能性もあるでしょう。
6.咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
後遺障害認定における咀嚼機能の障害とは、通常の固さの食材は問題なく噛めても、ピーナッツや沢庵のような固い食材をまったく噛めない、または十分に噛めない状態を指します。
この障害が認定されるためには、不正咬合や顎関節の異常など、咀嚼障害の原因が医学的に確認されている必要があります。
言語機能の障害とは、口唇音(ま行やぱ行など)、歯舌音(な行、さ行など)、口蓋音(か行やや行など)、喉頭音(は行)の4種の子音のうち1種類以上の発音が十分にできない状態のことを指します。
9級6号は、咀嚼機能と言語機能の両方に障害が残った場合に認定される等級です。咀嚼機能と言語機能のどちらか一方のみに障害が残った場合は、10級3号が認定されます。
7.両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
1m以上の距離では普通の話声を解することができない程度とは、次のいずれかの状態を指します。
- 平均純音聴力レベルが60dB以上の状態
- 平均純音聴力レベルが50dB以上かつ最高明瞭度が70%以下の状態
平均純音聴力レベルとはどの程度まで小さな音を聞き取れるかのレベルのことです。最高明瞭度とは、言葉をはっきり聞き取れる程度のことです。最高明瞭度70%以下とは、1m先の会話の7割以下しか聞き取れない状態のことを指します。
聴力障害については、聞き取れる音によって認定される後遺障害等級が区別されています。たとえば1m以上の距離では普通の話声を解することが「困難である」程度の場合、9級7号より軽い10級5号の認定対象です。
8.一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
耳に接しなければ大声を理解することができない程度とは、平均純音聴力レベルが80〜90dB未満の状態を指します。
そして、1m以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度とは、次のいずれかの状態のことです。
- 平均純音聴力レベルが50dB以上の状態
- 平均純音聴力レベルが40dB以上かつ最高明瞭度が70%以下の状態
それぞれの耳が各条件を満たす場合、9級8号が認定されます。
9.一耳の聴力を全く失つたもの
片耳の聴力が失われたときには、9級9号が認定されます。具体的な数値としては、平均純音聴力レベルが90dB以上の状態のことです。
もう一方の耳にも障害が残った場合、7級3号や6級4号など、より重い等級の認定対象となります。
10.神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
9級10号の神経系統の機能または精神の障害とは、主に高次脳機能障害もしくは脳挫傷や脊髄損傷による身体的機能障害に分けられます。
高次脳機能障害とは、次のいずれかの能力が相当程度失われた状態のことです。
- 意思疎通能力
- 問題解決能力
- 作業負荷に対する持続力・持久力
- 社会行動能力
これらの能力のうち1つが相当程度失われた状態になると9級10号が認定されます。さらに、これらの能力のうち2つ以上が失われた状態になると7級4号の認定対象となります。
身体的機能障害としては、腕や足に麻痺が残り、文字を書くのが困難になったり、転倒しやすくなったりする状態が挙げられるでしょう。
「服することができる労務が相当な程度に制限される」とは、障害により従事できる業務内容に大きな制限が生じる状態を指します。
11.胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
胸腹部臓器の機能障害とは、呼吸器、循環器、消化器、泌尿器の機能障害を指します。9級10号と同じく、障害が原因で働くことのできる業務内容にかなりの制限がかかる状態の場合に9級11号が認定されます。
制限される程度によっては、軽い11級10号が認定されたり、より重い7級5号が認定されたりする可能性があります。
12.一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの
「指を失った」とは、親指については第一関節から先、それ以外の指については第二関節より先の骨から切断された状態のことを指します。9級12号は、親指もしくは親指以外の2本が失われた場合に認定される等級です。
13.一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの
指の「用を廃した」状態とは、次のいずれかの状態のことです。
- 関節が強直して全く動かせない状態となった
- 末関節の長さの半分以上を失った
- 第二関節、第三関節を失った、可動域が1/2以下に制限された
9級13号は、次のいずれかの場合に認定されます。
- 親指と親指以外の1本が用を廃した状態になった
- 親指以外の3本の指が用を廃した状態になった
指の「用を廃した」ことによる後遺障害は、指の種類や本数によって細かく等級が分けられています。等級を判断する際は、どの指が、何本の指が用を廃したのかという点を正確に確認するようにしてください。
14.一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの
「足指を失った」とは、足指が足指の根元にある中足指節関節から先で切断された状態のことです。第一の足指とは、足の親指のことを指します。
9級14号は、足の親指とそれ以外の指1本を失った場合に認定される等級です。
15.一足の足指の全部の用を廃したもの
指の「用を廃した」の意味は、手の指の9級13号と同様です。片足のすべての指が「用を廃した」状態になった場合、9級15号が認定されます。
16.外貌に相当程度の醜状を残すもの
「外貌」とは、頭や顔、首など日常的に露出されている箇所のことです。「醜状」とは、火傷や手術痕などの傷跡のことを言います。
9級16号の認定対象となる外貌の醜状とは、顔面部に残る長さ5cm以上の線状痕で、人目につく程度以上の傷跡を指します。
外貌の醜状については、程度によって12級14号や7級12号など他の等級が認定される可能性があります。
17.生殖器に著しい障害を残すもの
生殖器の著しい障害とは、生殖機能は残っているものの、通常の性交では生殖できない状態のことを指します。男性の場合、陰茎の欠損や勃起障害により膣に挿入できない状態が生殖器の著しい障害に該当します。女性の場合には、膣口狭窄や両側卵管閉塞が生殖器の著しい障害に該当します。
男性が両方の睾丸を失い、完全に生殖機能が失われた場合には、より重い7級13号が認定されます。
後遺障害等級9級の慰謝料・逸失利益
後遺障害等級が認定されると、等級に応じた後遺障害慰謝料と逸失利益の賠償を受けられます。ここでは、後遺障害等級9級の後遺障害慰謝料と逸失利益について詳しく解説します。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、交通事故で後遺症が残ったことによる精神的苦痛に対する慰謝料です。後遺障害慰謝料には、次の3つの基準があります。

このうち、自賠責基準と弁護士基準については具体的な金額が明らかにされています。任意保険基準については算定方法が明らかではありませんが、自賠責基準よりは高いものの、弁護士基準よりかなり低い金額を提案されるケースがほとんどです。
後遺障害等級9級の自賠責基準と弁護士基準での後遺障害慰謝料は、次のようになっています。
- 自賠責基準:249万円
- 弁護士基準:690万円
自賠責基準と弁護士基準との差は、等級が高くなるにつれて大きくなります。9級では、400万円以上もの差があります。
自賠責保険における慰謝料と逸失利益を含めた賠償金の上限額は616万円で弁護士基準の慰謝料を下回る基準となっています。弁護士基準では慰謝料690万円に加えて、被害者の方の年齢や収入に応じた逸失利益が支払われるため、慰謝料と逸失利益を合算した場合、賠償額の差が数倍に及ぶこともあります。
逸失利益
逸失利益とは、後遺障害により将来得られるはずだった収入が得られなくなることに対する損害賠償金です。
逸失利益の計算式は、次のようになっています。
逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
労働能力喪失率とは、後遺障害によって失われる労働能力の割合を示す数値で、等級ごとに目安が定められています。後遺障害等級9級の場合、その目安は35%とされています。
なお、等級に応じた労働能力喪失率はあくまで目安となるものなので、同じ後遺障害等級9級でも症状によって数値は変動する可能性があります。
労働能力喪失期間は、症状固定日から67歳までの年数で計算します。なお、年長者の労働能力喪失期間は、67歳までの年数と平均余命の2分の1のいずれか長い方の期間です。
まとめ
後遺障害等級9級に該当するかどうかの判断や、適切な慰謝料・逸失利益の請求には、専門的な知識と的確な対応が求められます。
適正な補償を受けるためには、後遺障害の内容や等級認定、損害額の算定について丁寧に検討することが重要です。
交通事故後の対応や後遺障害に関してお悩みの方は、ぜひHOPE法律事務所にご相談ください。
