交通事故でペットが死傷した場合の損害賠償について
2025年7月19日 カテゴリー:車載物の損害

交通事故に遭うと、人だけでなく車内の物にも損害が及ぶことがあります。もし車内にペット(特に犬など)が同乗していた場合、不幸にもそのペットが死傷してしまうことがあります。
今回は、ペットが交通事故で被害を受けた場合の損害賠償について解説します。
ペットが死亡した場合の損害賠償(物的損害)
法律上、ペットは「物」として扱われるため、死亡した場合には、その“物としての価値”が賠償の対象になります。これは、車が全損したときに「時価」が賠償されるのと同様の考え方です。
ただし、ペットの「時価」の算定は非常に難しい問題です。車両のように減価償却の概念があるわけでもなく、成長したペットの中古市場が確立しているわけでもありません。現実的には、購入価格や平均的な余命などを参考にして金額を決定するケースが多いといえるでしょう。
参考までに、過去の裁判例では、盲導犬が死亡したケースで約260万円の賠償が認められた例があります。この場合、単に生体としての価値ではなく、盲導犬として活動できる期間や育成にかかった費用などが考慮されました。
ペットが死亡した場合の慰謝料
一般的に、交通事故で壊れた物に対して慰謝料は認められません。たとえば、親族の形見であっても例外ではありません。しかし、ペットの場合は「家族同然」として深い愛情を注いでいた関係性がある場合、例外的に慰謝料が認められることもあります。
とはいえ、認定される慰謝料の金額は数万円から高くても数十万円程度であり、人の死亡事故における慰謝料と比べると、金額的にはどうしても差が生じてしまうのが現実です。
ペットの治療費の賠償
事故によってペットに治療が必要となり、高額な医療費が発生した場合、その全額が賠償されるかどうかも問題となります。
保険会社の一部では、「車と同様に、生体価格(=時価)を超える治療費は経済的に全損」として、生体価格の範囲内でしか賠償できないと主張されることもあります。
しかし、ペットは単なる物とは異なり、生きた存在であり家族の一員ともいえる存在です。そのため、ペットが社会的・家庭的に果たす役割を踏まえれば、相応の治療費については賠償の対象として認められるべきでしょう。
なお、この問題に関しては、『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称:赤い本)』にも事例が掲載されています。これを参考にしつつも、時価額を基準に賠償額を制限するという考え方には、感情的に納得できないという声もあります。
現実には、事故の対象となったペットの種類や年齢、寿命、価格、治療内容や期間などを総合的に考慮し、個別に妥当な賠償額を決定していくほかないと考えられます。
まとめ
交通事故でペットが死傷した場合、法律上は「物」として扱われるため、死亡時の賠償は主に「時価」が基準となります。慰謝料や治療費についても、人と同じようには評価されにくいのが現実です。
それでも、ペットを家族とみなす社会的な理解が進んできており、一定の慰謝料や治療費が認められるケースも増えつつあります。今後は、より実情に即した賠償が広がっていくことが期待されます。
私自身も愛犬家として、ペットが「物」としてしか扱われない現実には深い悲しみを感じます。だからこそ、正しい知識を持ち、必要なときは専門家に相談することが大切です。
