弁護士費用特約③

2023年12月6日 カテゴリー:弁護士費用特約

交通事故は多くの方にとって慣れない出来事です。事故によって日常が失われ、車を始めとする重要な財産が壊れ、場合によっては身体に大きな怪我を負います。怪我の治療のために医療機関に通院したり、治療の期間、賠償の内容、保険制度を巡る難しい問題とも対峙しなくてはなりません。
そんな非日常の出来事を代わりに手続きをしてくれるのが被害者側弁護士の役割となります。
現在では、自動車保険や火災保険などに弁護士費用特約が付保されていることも多く、多くの方が交通事故の手続きを弁護士に依頼することができるようになりました。
一方で、弁護士費用特約に加入していない方は、自費で弁護士に依頼をしないといけませんが、場合によっては弁護士費用を加害者に負担させることができることがあります。
最判昭和44年2月27日判決も、「相手方の故意または過失によって自己の権利を侵害された者が損害賠償義務者たる相手方から容易にその履行を受け得ないため、自己の権利擁護上、訴えを提起することを余儀なくされた場合においては、一般人は弁護士に委任するにあらざれば、充分な訴訟活動をなし得ない」から、「訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、右不法行為と相当因果関係に損害」については相手方に請求することを認めています。
訴訟での弁護士費用の算定方法ですが、弁護士費用を除いた総損害額を確定し、これに過失相殺・損益相殺・既払金控除をおこなった残額の1割程度を弁護士費用相当額の損害として計上することが多いと思います。
この計算基準は、主に判決を念頭においたものであり、訴訟における和解の場ではこの金額よりも部分的なものとなります。静岡地方裁判所では、和解協議では、弁護士費用と不法行為時からの遅延損害金を含めて半分程度とすることが多いかと思います。簡易裁判所では、弁護士費用は数%の付加にとどまったり、弁護士費用の加算がない場合も多くあります。
弁護士費用特約が付保されていても、損害の項目自体としては弁護士費用相当額の損害が認められます。裁判例でも「仮に、原告甲野が自動車保険契約の弁護士費用特約を利用していたとしても、弁護士費用相当額の保険金は、原告甲野の負担した保険料の対価として支払われるものであるから、原告甲野に弁護士費用相当額の損害が発生していないとはいえない」として弁護士費用を損害として認めています。
もっとも、保険の理屈からすれば、弁護士費用特約も損害保険ですので、弁護士費用特約から保険金が支払われた場合には、保険代位により弁護士費用の請求権は自身が加入する保険会社に移転してしまいます。そのため、判決で弁護士費用相当額の損害が認められても、弁護士費用特約から支払われた限度で、判決で認められた弁護士費用相当額の支払を相手から受けた場合には、加入の任意保険会社に返金する必要があります。ただし、判決と異なり、和解の場合には、弁護士費用特約と遅延損害金の一部を調整金として支払いを受けることが多い為、弁護士費用としての返金を行わなくてもよいことが多いです。
このとおり、解決の仕方によっては依頼者の手元に残る賠償金に違いが出てしまいますので、事故の賠償のことは静岡で交通事故弁護が得意なHOPE法律事務所にご相談いただければと思います。