過失案件と代車費用~代車費用①〜

2023年8月2日 カテゴリー:代車費用

交通事故による賠償項目に、修理期間または買替期間中の代車費用(レンタカー費用)があります。
一般的に、代車の必要性が肯定される場合には、事故車両と同種・同年式といった同程度の代車費用が請求できるというのが法理論的な結論です。

しかし、実際の賠償実務では必ずしもそうなっておりません。

まず、過失案件(被害者側にも過失が存在する案件、過失0:10では無い事故)では、代車の必要性を満たしていても加害者側保険会社が代車費用を支払うことは稀です。

他にも、いわゆる工場代車(レンタカー登録されておらず、修理工場が自社で保有している貸出用の車両)も、場合によっては代車費用の支払を拒絶することがあります。

損害保険会社の主張は、前者は、双方に過失があるのでお互い様である、後者は、工場代車は無料で貸し出しているのだから費用を支払う必要はないというものが主です。

しかし、前者は、過失分の支払いを免れる法的な根拠はありませんし、後者も、経済社会では自動車という高価値の動産を無償で借りることはできず(修理業者は工場代車の保有のために、整備費、保険料、税金を支払って維持しています)、損害保険会社が費用を払わないので仕方なく修理業者がサービスでお客さんに貸し出しているに過ぎません。

弁護士が交渉をすれば上記ケースでも代車費用を損害保険会社に支払ってもらえるケースもあります。
もっとも、代車費用は、事故被害者の手元に残る賠償金ではなく、修理業者の利益となるため、事故被害者にとって弁護士を立てて争う必要性が高いというわけではなく、早期解決のために修理業者に負担を押し付けて解決している側面がかなり強いです。

これが損害保険会社の現在の実務を可能にしている利益背景のひとつになります。