もらい事故の特徴と適正な賠償を受けるために行うべきこと
2025年4月21日 カテゴリー:交通事故
今回は、「もらい事故」について説明します。
1 もらい事故とは?
「もらい事故」とは、事故の原因がもっぱら相手にあり、自分側に全く落ち度がないものを指します。
代表的な例としては、以下のようなケースが挙げられます。
• 赤信号で停止中に、後続車に追突された
・赤信号を無視して進行してきた車と衝突した
• 対向車がセンターラインを越えてきて正面衝突した
• 駐車場内で適切に駐車していたら、走行してきた車に当てられた
一般に、一時停止標識のある道路から交差点に進入してきた車両と衝突した場合などには、優先道路を走行していた自分には過失がないと考えてしまいがちですが、法的には、道路状況に応じて、概ね10%~40%程度の過失があると評価されてしまいますので、「全く過失がない」場面は、かなり限定的であることに注意が必要です。
2 もらい事故の特徴
(1) 損害負担なし
多くの交通事故では「過失割合」が問題になりますが、もらい事故では被害者側に過失がないため、原則として加害者がすべての損害を負担し、被害者に損害負担は生じません。
また、被害者には運転免許について違反点数の加算がありません。
(2)自分の保険会社が介入できないことがある
被害者に過失がない場合、自身が加入する自動車保険(特に「対人・対物賠償保険」)は使えず、保険会社が示談交渉に介入できないケースがあります。
双方に過失のある事故の場合には、保険会社が示談交渉を代行し、過失割合が決まるのが一般的です。しかし、もらい事故の場合は過失割合が0対100となるため、被害者自身が加入している保険会社は示談交渉を行うことができないのです。
これは、弁護士法72条が、弁護士や弁護士法人以外の者が報酬を得る目的で法律事務をすることを禁じていることによります。双方に過失がある場合に保険会社が示談交渉を代行できるのは、自社の費用負担額を減らすという保険会社独自の利益等があるため、弁護士法72条によって禁止される行為にあたらないとされているからです。
他方で、被害者に全く過失がないときには、生じた損害の全額を相手(又は相手の保険会社)が負担することになるため、被害者加入の保険会社は、一切の費用支出をしなくて済み、保険会社として独自の利益をもたないことになります。
そのため、もらい事故の場合は、被害者が自ら示談交渉を行って治療内容や通院期間が適切であることを主張する必要があり、その手続のために精神的・時間的な負担が大きくなりがちです。
3 被害者が請求できる損害
もらい事故にかぎらず、交通事故の被害者は、相手(又は相手の保険会社)に対し、物的損害(車両の修理費など)及び人身損害(治療費、通院交通費、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益など)を請求することができます。
実際にいくら支払ってもらえるかは、損害を受けた車両の状態や、お怪我の状況などによって異なります。事故によってお怪我をした場合の傷害慰謝料額は、概ね事故日から症状固定までの通院期間によって算定されますが、具体的な算定基準等については今後別の記事にまとめる予定ですので、ぜひご確認ください。
4 もらい事故に遭った場合の対応
(1)事故状況の記録を残しておく
現場の写真、ドライブレコーダーの映像、事故証明書(自動車安全運転センター都道府県方面事務所長が発行)など、事故の状況を客観的に把握できる証拠を確保しておくことが大切です。過失がないことを主張するための重要な証拠になります。
(2)医師の診断を受ける
事故直後に痛みなどの症状を感じなくても、のちに症状が出ることもあります。症状が出た場合には早めに医師の診察を受け、処方や治療を受けることが大切です。
医師の診断は、相手の保険会社に治療費等を請求する際にも重要な意味をもちます。相手の保険会社からすれば、診断書をみて本当に必要な治療だったのか、通院期間は妥当なのかを判断することになりますし、被害者側としても、必要な治療期間であったことを主張して交渉するために、診断書は重要な資料となります(上記のとおり治療費自体だけでなく傷害慰謝料の算定にあたっても重要な資料になります)。
(3)弁護士に相談する
もらい事故で、被害者が加入する保険会社が示談交渉を代行してくれない場合には、被害者が不利な立場に立たされるケースがあります。事故の被害者は、相手に対し、通院慰謝料や通院交通費、休業損害、後遺障害慰謝料など、様々な損害賠償請求が可能です。しかし、加害者側の保険会社はできるだけ支払額を抑えようとする傾向があるため、提示された金額が本来の相場よりも低くなる場合があります。
適正な賠償額の獲得や、保険会社との交渉をスムーズに進めるためにも、早期に弁護士へ相談することをおすすめします。
5 弁護士費用特約のすすめ
ご自身の保険に弁護士費用特約をつけていれば、弁護士費用を気にすることなく、相手の保険会社との交渉を弁護士に任せることができます。
弁護士費用特約は、事故に遭ってから示談が成立するまでのどのタイミングでも使用できます。
通常、弁護士に示談交渉を委任する場合には、相談料や、着手金、成功報酬など数十万円以上の費用がかかることになります。しかし、弁護士費用特約を使えば、相談費用は10万円、依頼費用は1回の事故につき1人あたり300万円まで保険で賄われます。ほとんどの場合、弁護士費用特約の補償範囲を超えて弁護士費用がかかることはありませんので、追加の費用負担なく、弁護士に交渉を任せられます。なお、弁護士は、保険会社に対して直接費用を請求しますので、ご自身による立て替えの必要もありません。
また、通常は個人でご加入の自動車保険(ノンフリート契約)については、弁護士費用特約を利用しても保険の等級が下がることはなく、保険料が上がる心配もありません(会社などでフリート契約の場合(フリート契約)には、保険料増額の可能性がありますのご注意ください)。
弁護士費用特約は、ご自身が加入していなくても、同居家族などが加入していれば使えることがあります。また、事故に遭った際の同乗者については、友人や恋人など家族以外の人にも適用されることが一般的です。ご自身が弁護士費用特約に加入していない場合でも、ご家族や運転者の保険に付帯していないか、よく確認していただくことをおすすめします。
6 まとめ
もらい事故は「自分には落ち度がない事故」であるにもかかわらず、精神的・手続的な負担が大きくなりがちです。
保険会社が交渉を代行してくれないため、ご自身で加害者側との交渉が必要になることから、早期の専門家の介入が非常に重要です。当事務所では、もらい事故を含むあらゆる交通事故のご相談を承っております。
「自分で対応するのは不安」「保険会社の対応に納得がいかない」と感じたら、ぜひお気軽にご相談ください。特に、ご加入の保険に弁護士特約がついていれば、追加の費用支出なく弁護士に示談交渉を任せられますので、ぜひご活用ください