非接触事故について
2025年3月7日 カテゴリー:交通事故
交通事故は通常であれば、こちら側と相手側が接触して物の損傷や怪我が生じます。しかし、事故の形よっては、お互いの接触が無い場合で、当事者の一方が転倒、衝突、急制動によって損害を被る場合があります。これらが非接触事故であり、非接触事故の場合には、①運転行為と事故との因果関係、②事故と損害の因果関係など通常問題にならない事項について、争いが発生します。そこで、非接触事故をめぐる争いは多岐にわたりますが、争われる可能性のある、運転行為と事故発生の因果関係、事故の過失割合、事故と損害の因果関係などを適宜説明させていただきます。
通常、加害者の運転行為によって被害者の車両や身体に接触が生じるため、加害者の運転行為との間の因果関係が問題になることは多くありません。しかし、道路を走行していたところ、歩道を自転車に乗った小学生が通行しており、小学生に近づいたところ、突然道路を横断しようとして車道方向へ進路を急に変えたことから、それをよけるためにハンドルを回避したところ、反対車線を通行してきた対向車と接触した場合のような、非接触事故の場合には、加害者の運転行為と事故発生との因果関係がそもそも問題となります。
この場合、加害者の位置や進行の方向などから、間近に事故発生の客観的な危険性が確認できる場合には、加害者(小学生)の運転と被害者が起こした事故の因果関係は認められます。
しかし、このケースで実は、小学生は道路を横断しようとしたのではなく、歩道に落ちていた間近に迫った空き缶をよけるために道路側に急にハンドルを切ってすぐに歩道に戻ったような場合には、小学生の運転行為の客観的な危険性は下がっていきます。この缶を避ける行為が時間的に差し迫っていなければいないほど、因果関係は否定される方向になるかと思います。また、ある程度まだ自動車との距離があり余裕がある距離間で缶を避けようとしたが、自動車の運転者がびっくりして回避行動をした場合には、その缶を避ける行為がなされた距離感や、缶を避ける動作と横断動作との区別の困難性などからして、小学生は横断しようとした際の過失ではなく、横断をするような誤解を与えた運転をした過失が問題とされ、過失考慮における帰責性の内容が変わる可能性があります。
このように、非接触事故の場合には、どのタイミングで加害者の運転行為がなされたか、その危険性がどのようなものだったのかによって、因果関係が否定されるところから、通常問題となる過失割合よりも軽減された過失内容で過失割合を判断される場合があるのです。
次に、事故と損害との因果関係ですが、特に問題となるのが非接触事故における回避車両乗車人の受傷の問題です。この場合には、直接の接触による衝撃が加わらず、乗車人に加わるのは、ハンドルの急転把による衝撃や、急制動による衝撃が主たるものになります。そのため、非接触事故により怪我が生じたという場合には、乗車姿勢、お互いの速度、回避動作・急制動動作の大きさなどが客観的に明らかにされる必要があります。また、仮に受傷が認められたとしても、通常の衝突事故よりも、身体に加わる衝撃が小さくなる傾向があるため、治療期間の相当性をめぐる争いが生じやすいと言えます。
また、急制動や急転把を行うと、車内の積載物が損傷することが多いのですが、車内の積載物が損傷するかはどのような衝撃が車体に加わったのか、積載物の積載状況などによって異なるため、積載物の損傷をめぐって意見が対立しやすいという構造があります。
以上の争いは、非接触事故という特殊性から、車体に衝突の痕跡が残らないことから、車体の痕跡を通じた事故衝撃度を推し量る尺度が失われてしまうという点にあります。そのため、非接触事故に遭ってしまったときは、ドライブレコーダーや付近の防犯カメラ映像がある場合には、確実に保全を行う必要があります。また、事故直後の車両の位置関係などをできる限り手持ちのスマートフォンなどで撮影し、事故状況の保全を行う必要があります。警察の実況見分に対しても、どの位置で相手方がどのような運転動作を行ったかが非常に大切な問題となることから、妥協せずに事情を説明していく必要があります。さらに、積載物の積載状況をすぐに車内撮影するなどして保全する必要もありますし、受傷があるならば事故当日又はできるだけ早期に受診して、非接触事故による衝撃で受傷した旨を診察医に説明する必要があります。
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