交通事故と裁判について
2025年2月14日 カテゴリー:交通事故
交通事故に遭われた被害者の方は、通常であれば、相手が加入している任意保険会社の担当者と事故手続きを進めていくことになり、賠償の内容について合意できれば示談となり、事故手続きは解決となります。
ただ、全ての事故手続きが訴訟外の示談により解決できるわけではなく、裁判を行わなければならないこともあります。
そこで、今回のブログでは、どのようなときに交通事故において裁判が必要になるか、また裁判はどのように進んでいくのかについて説明をさせていただきます。
裁判を必要とする理由はいくつかあります。①過失割合や損害に関する見解の相違②相手と協議ができない③保険制度上訴訟による解決の必要性が高い場合などが典型的な理由です。
①の過失割合や損害に関する見解の相違についてですが、まず双方の運転者が、事故の過失割合について納得しない場合には裁判が必要になります。ドライブレコーダーや防犯カメラなどがなく、双方が「青信号」で交差点に進入したと主張する事案や、一時停止の有無などの過失の修正要素の有無を巡って裁判になるケースです。特に、歩行者、自転車、バイク事故のように、「人身傷害保険」が付保されていない事故については、過失の割合が直接、被害者の受領額に影響を与えるため激しく過失が争われる傾向にあります。
②相手が無保険(自賠責、任意保険)の場合には、賠償交渉にあたって相手と直接話をしなければならないことが多いですが、協議途中で相手と連絡が取れなくなることがよくあります。また、相手の任意保険会社と協議できている場合でも、相手任意保険会社の担当者と協議した解決案について、相手保険会社担当者から相手方に承諾の連絡を入れても繋がらないとして連絡が取れなくなってしまうことが稀にあります。このような場合には、相手方本人へ訴訟を提起したり、保険会社への直接請求も併せて提訴するということが行われます。
③また、相手保険会社担当者との間で、過失の割合や損害額について特段相違点が無い場合であっても、被害者の過失割合がある程度生じると、訴訟を提起し、裁判上の和解を行うことで、人身傷害保険から訴訟差額基準説に従った人身傷害保険金を請求するメリットが大きくなります。そのため、人身傷害保険の約款上の条件を満たすために提訴がなされることもあります。
次に、ご依頼者からは裁判に関して、「裁判は私も出席しないといけませんか」「裁判はどれくらいの長さで解決するのですか」「裁判になると賠償金が増えるときいたのですが本当ですか」といった質問を受けます。
まず、裁判の出席ですが、弁護士を代理人として訴訟を提起する場合には、基本的には弁護士が裁判所に出頭したりWEB上で裁判を行ったりすることから、ご依頼者は裁判に出席する必要がありません。ただし、過失割合の争いが深く、事故態様について当事者から事故の状況を尋問で供述してもらったり、後遺障害の残存が問題となっていて症状経過などを供述してもらったりする必要がある場合には、尋問期日に出頭してもらう必要があります。しかし、交通事故の裁判の多くは、尋問まで進まずに裁判上の和解で解決するため、当事者が出頭することは稀だと思います。
また、裁判はどれくらいの期間かかりますかとの質問は、裁判上の争点の深さによって変わるため一概には言えないところがあります。比較的簡明な裁判であれば、訴訟提起から半年程度で裁判官からの和解提案まで進めますし、複雑な案件であれば1年前後かかる事案もあります。医療の問題が関わる事案については、それ以上の期間がかかることもありますのでやはり個別のケースによるというのが実情です。
多くの方が興味があるのが、裁判になると示談交渉時よりも賠償金が増えるのかという点ですが、これは非常に難しい問題です。結論として、裁判で主要な争点の多くに勝てば賠償金が示談交渉時より増える場合が多いと思います。しかし、相手保険会社は、示談交渉で解決できるのであれば、争わない争点などもあり、訴訟になれば問題となるすべての争点について争ってきますので、裁判になり、示談交渉時には争わなかった争点について争われた結果、賠償金が大きく減少することも珍しくはありません。大切なことは、裁判になった際の勝訴メリット・敗訴リスクを正確に予測し、示談交渉で解決するのか、訴訟提起へと進むのかを判断することです。
交通事故賠償に強い弁護士法人HOPE法律事務所なら、事案ごとに訴訟のメリット・デメリットを検討し、十分にご依頼者に説明を行います。交通事故で裁判を検討している方は、静岡(静岡市、浜松市、沼津市、焼津市、藤枝市、富士市など全域対応)の交通事故に強いHOPE法律事務所にご相談いただくのをお勧めいたします。