休業損害⑤~会社役員の休業損害・逸失利益~
2024年8月2日 カテゴリー:休業損害
会社の役員(取締役・監査役など)が交通事故に遭い、会社を休業した場合の休業損害や、会社役員に後遺障害が残存した場合に逸失利益を算定する上で基礎収入をどのように考えるかについては非常に難しい問題があります。
この問題は非常に難しいため、今回は、会社役員の休業損害について説明します。
まず、会社役員が事故にあって、通院などで本来の業務に支障が出た場合に、よく言われるのが「会社役員は休業損害が請求できない」とのフレーズですが、これは正確ではありません。正しくは、「休業損害が請求できないことが多い」となります。
なぜ休業損害を請求することができないことが「多い」かというと、役員個人の「損害」が無いことが多いためです。会社と役員との法律関係は「雇用契約」ではなく、「委任契約」であるため、基本的に出社義務がなく、仮に交通事故で多少休んだり、通院に時間を取られたとしても、株主総会(又は委任を受けた取締役会)で決められた役員報酬が支給されることから、役員個人には「損害」が生じません。
他方で、会社役員がまったく休業損害が請求できないかと言えばそうではなく、重大な骨折などで長期通院が必要であることから、正規の手続きで役員報酬を減額または不支給とされた場合には、役員個人の「損害」を観念できるようになり、休業損害の対象となります。もっとも、会社の役員は、株主総会等で役員報酬の減額決議を取れば直ちに税制上有効と扱われるわけではありませんので、事故手続きとの関係でのみ役員報酬を減額すると、会社経費に算入されない可能性がありますので注意が必要です。
では、会社役員が一定期間休業していたにも関わらず、会社が役員報酬を支払った場合には、休業損害は請求できないかというと、個人の役員については損害がありませんので既述のとおり休業損害を請求できません。しかし、会社は、委任契約で決まっているとはいえ、休業中の取締役のために既定の役員報酬を支払ったのですから、会社には休業期間に対応する役員報酬相当額の損害が生じたとみることができます。この場合は、「反射損害」という概念で、役員や従業員への休業損害の支払に伴った賠償者代位と類似の考えで会社に賠償請求が成立すると考えられています。
このように、会社役員への休業損害は認められる余地があるものの、その内容は複雑ですし、必要となる書類(株主総会議事録)の複雑性などもあり、ほとんど請求がされていません。
しかし、交通事故賠償に強い弁護士法人HOPE法律事務所なら、事案ごとに休業損害の請求可能性を判断し、請求が可能な場合には、必要な資料の作成についてサポートいたします。そのため事故にあって休業損害が気になる方は、静岡の交通事故に強いHOPE法律事務所にご相談いただくのをお勧めいたします。